将棋関連書籍Amazon売上TOP10(7月30日)

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桜吹雪の日の熱戦

週末は、将棋ペンクラブ大賞最終選考会の原稿作成作業、飲み会、社会人リーグなどがあり、ブログの更新が難しいため、一昨日、昨日に引き続き、私が過去に書いた観戦記を掲載したい。

三度目に書いた観戦記は、2006年度NHK杯将棋トーナメント1回戦の島明八段-福崎文吾九段戦。

「桜吹雪の日の熱戦」という題で書いた。

華々しい大駒の乱舞と、今明かされるNHK杯の秘められたジンクス。

NHK将棋講座2006年6月号より。

—–

桜吹雪の日の熱戦

「このたびはおめでとうございます」

島朗八段が、先に控え室に入っていた福崎文吾九段と解説の阿部隆八段に挨拶をする。
福崎は昨年10月28日に九段に昇段し、免状授与式が4月中旬に行われる。阿部は3月にA級昇級を果たした。

福崎は阿部の兄弟子。阿部は福崎の強さに憧れて田中魁秀九段門を叩いた。

「福崎さんは人柄も良く、いろいろアドバイスをもらったりしています」(阿部)

少ししてから、いつもの温和な笑顔で、Kプロデューサーが控え室にやってきた。

「今日は、おめでたいことがあった方々が集まりましたね」

島も、前の週の竜王戦で谷川浩司九段に勝ち、目下9連勝中。昨年の6月に日本将棋連盟の理事になってから戦績が思わしくなかったが、12月以降は12勝1敗と完全に復調し、苦しかった順位戦も残留を決めている。

「力戦派で鋭利な終盤の福崎と、理論派で粘り強い終盤の島」(阿部)の一戦。

正反対な棋風のぶつかり合いゆえか、本局では、大駒が乱舞する華々しい斬り合いが繰り広げられることになる。

この日の東京は強風が吹き荒れ、満開の桜の花びらが宙を舞い踊っていた。

初手からの指し手

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲7八金 △4四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲4八銀 △5四歩 ▲5六歩 △4二銀 ▲6九玉 △5二飛 (1図)

福崎の新手順

対局前の控え室では、今期から司会を担当する中倉宏美女流初段に、福崎がいろいろ質問をしていた。

「ツーリング行ってはりますのん?」

「はい、これからはいい季節になりますね」

「中倉さん、僕のと違ってええのん乗ってるからなあ。あれ、なんていうたかなあ?」

「ハーレーです」

「ええなあ。ところで司会は慣れた?……何で僕が司会者にこんなに質問せなあかんの?」

中倉は笑いが止まらない。2度目の収録日をむかえた中倉を、本番前にリラックスさせようという気遣いだ。

スタジオへ移って、リハーサル終了後の短い休憩時間、福崎はスタジオの奥にある解説室に入って、阿部と話をしていた。この様子を副調整室のモニターでみていた女性ディレクターのNさんが叫ぶように独り言を言った。

「あー、福崎先生、解説室に入っちゃダメ!解説室に入った対局者は負けてしまうジンクスがあるんだから……あっ、そういえば去年、中村先生は勝ったか」

長く続いたジンクスは中村修八段によって断ち切られたらしい。

さて、本局の序盤、福崎が工夫を見せた。4手目に、1手損角換わり風に△3二金とし、島に▲7八金と上がらせておいてから角道を止め、中飛車に振った。7八に金があるため、居飛車側は穴熊にも舟囲いにも組みづらい。囲いを完成させるにも手数がかかる。振飛車側は、その間に悠々と穴熊に入城することができる。

「福崎さんがあたためていた戦法かもしれません」(阿部)

photo (1)

1図からの指し手

▲5八金 △6二玉 ▲5七銀 △7二玉 ▲7七角 △5三銀 ▲6六歩 △5五歩 ▲同 歩 △6四銀 ▲6七金右△5五銀 ▲5六歩 △6四銀 ▲8八銀 △8二玉 ▲8六歩 △9二香 ▲7九玉 △9一玉 ▲8七銀 △8二銀 ▲8八玉 △4三金 ▲9六歩 △7一金 ▲8五歩 △7四歩 ▲8六角 △4五歩 ▲7七桂 △5一飛 ▲4六歩 (2図)

福崎流穴熊

福崎の九段昇段が決まった1ヵ月後、関西本部所属棋士による手作りの、福崎の昇段を祝う会が催され、内藤九段、谷川九段をはじめとする多数の棋士や関係者が出席した。多くの人に好かれる福崎であればこそ。

また、福崎はこの3月まで「将棋世界」で33回にわたり、関西棋士の紹介やその棋士の内面の勝負観をレポートしてきた。

「福崎さんの大盤解説なら行くというファンが多い。一緒に解説していると、自分も笑ってしまう」(阿部)

福崎は、わざと悪い手をやって王手飛車取りなどにかかり、「しもうた」といいながら、正しい手を聴き手にわかりやすく解説する。

だが、「対局のときの顔は違う」(阿部)

7八金を無駄にしたくない島は銀冠を目指し、福崎は得意の穴熊へ。

福崎流穴熊は、6四に銀を配し、左金を攻めに使う。振り飛車名人といわれた故・大野源一九段の中飛車に似た攻撃形だが、穴熊なので、飛車を7二にまわり、玉頭を攻撃するねらいも秘めていることが、大野流と大きく異なるところ。

「福崎流穴熊は、堅さよりも遠さ」(阿部)

photo_2 (1)

2図からの指し手(○数字は考慮時間の累計)

△同 歩 ▲4八飛 △5四金 ▲4六飛 △4五歩 ▲4九飛 △4一飛 ▲9八玉 △7三銀引①▲5五歩① (3図)

島の開戦

島は、昨年6月以降、普及担当理事として全国を駆け巡った。将棋の大会や将棋教室を訪問し、ファンの満足度を上げ、ファンの定着をはかるとともに、新しい将棋教室を立ち上げるなど、ファンの裾野を広げる動きも精力的に行っている。

そして、この4月からは出版担当理事としての仕事が加わった。

島は、将棋ペンクラブ大賞が始まってから17年の間に、賞を4回受賞している。受賞回数としては歴代最多。執筆者と担当理事で役回りは違うが、出版は、島のセンスを活かせる分野であり、今後に大いに期待が持てる。

本譜、島は▲5五歩(3図)と決戦に出た。5四の金を動かして、馬を作るねらいだ。

photo_3 (1)

3図からの指し手

△同 角③▲5六銀 △6四角 ▲同 角 △同 歩 ▲3二角②△5一飛 ▲4三角成③ △5五金⑤▲同 銀④△同 飛 ▲5六歩 △3八角 ▲5九飛 △5八歩 ▲8九飛⑤ △5六角成▲4四馬 △7五歩⑦ (4図)

絶対に引かない飛車

△5一飛に、▲5二歩は、△同飛▲2一角成△5五金で、桂得はしても馬が主戦場から離れているため、本譜よりもかなり劣る。島は▲4三角成として福崎の攻めを催促した。

このまま▲5二歩を打たれてはいけない福崎は△5五金からの荒さばき。

この瞬間▲5二歩は、△5六金▲5一歩成△6七金▲同金△5八角で先手敗勢。▲5三歩も、△5六金▲同金△3八角▲5九飛△4七角成で後手面白い。

阿部は、福崎が28秒まで考えて△5五同飛としたことに「福崎さんは気合が入っている。この飛車は絶対に引かない」と断言。

福崎の△3八角に、島は▲5九飛と寄り、△5八歩を打たせた上で飛車を逃げる。ここに後手の歩があると、後手の飛車の進入を遅らせることができる。

飛車のさばきを求めた福崎の△5六角成に対しては、島は▲4四馬と引き付ける。

「▲4四馬で自信が出た」(島)

この馬は、後手の飛車と馬の動きを牽制しつつ、遠く7一金をにらんでいる。

ここで福崎が繰り出した手が△7五歩(4図)。喧嘩のないところに喧嘩を売る手だ。

「福崎さんらしい一手」(阿部)

photo_4 (1)

4図からの指し手

▲同 歩⑦△5九歩成▲5五馬 △同 馬 ▲5一飛⑧△5四角⑧▲5九飛 △5八歩 ▲同 飛⑨△5六歩⑨▲同 金 (5図)

中央での激闘

△7五歩(4図)は悩ましい。

「△7五歩は参った。取る以外ない」(島)

「取られる手以外なら自信があった」(福崎)

放置すると、△7六歩~△7五歩と上部を押さえられ、△7六銀からの攻めが成立する。

△5九歩成に▲同飛なら、△6七馬▲5五飛△7八馬▲同銀△7六歩が厳しい。

島は▲5五馬と飛車と刺しちがえ▲5一飛と打ちおろすが、福崎の△5四角が、馬と桂を守りつつ、△7五歩(4図)でこじ開けた玉のコビンを狙った手。

続く▲5九飛の馬取りに、福崎は△5八歩で飛車を、△5六歩で金を引き付けた。

5筋に飛車角4枚が並ぶ形となった。

photo_5 (1)

5図からの指し手

△8七角成▲同 金 △3三馬 ▲2一飛成 △6七銀 ▲6三桂 △4三馬 ▲3二角 △同 馬 ▲同 竜 △5四角 ▲4三角 △同 角 ▲同 竜 (6図)

勝敗の分岐点

福崎の△6七銀から△4三馬には鋭いねらいが込められており、仮に▲4一竜と逃げると△8七角成▲同玉△7六銀で先手玉は寄り。

▲3二角以下、そのねらいを封じる角打ちが繰り返され、先手の竜は4三まで移動した。これなら▲7一桂成が甘くなる。

ここで、福崎が手を誤った。

photo_6 (1)

6図からの指し手

△5八銀不成⑩▲7一桂成△同 銀 ▲5四角 △6八飛 ▲8八金打△8二銀引▲7九金△8八飛成▲同金上 △2一角 ▲4一飛 △4三角 ▲同飛成 △7九銀 ▲6三角打 (7図)

形勢傾く

△5八銀不成と飛車を取った手が、福崎の勝機を逸した手だった。ここでは、感想戦で福崎が発見した△7六角が決め手で、以下▲同金△同銀成▲8七金△8六金▲同金△同成銀で、先手玉は寄り形となっていた。

振り返れば、5図からの△8七角成には▲同玉が正しかった。以下△3三馬▲5二飛成(▲2一飛成と桂を取ると△4三馬で王手竜)。

「前のめりになっていこうと考えていたので、桂を取らない手順は考えていなかった。同玉から切らしにいくのは一番好きそうな手なのにな」(島)

▲5四角は、▲7三竜△同桂▲8一金をねらう攻防手。福崎も△6八飛から攻めにいくが、▲7九金と手厚く受けられ指し切り気味。島は▲6三角打(7図)から寄せにはいる。

photo_7 (1)

7図からの指し手

△7二桂 ▲5二竜 △8八銀成▲同 金 △7三金 ▲7四銀 △6三金 ▲同銀成 △6七銀不成▲7二成銀△同 銀 ▲同角成 △7六角 ▲8七銀 △7一銀打▲8二馬 △同 銀 ▲同 竜 △同 玉 ▲7四桂  (投了図) まで137手で島八段の勝ち

島、10連勝達成

福崎も徹底防戦するが、島の鮮やかな寄せにより後手玉は詰み。投了図以下は、△7二玉なら▲6二金△7三玉▲8二銀まで。△7三玉なら▲6二銀△6三玉▲5三金△7二玉▲6三銀まで。

島は、2回戦で中原永世十段と対戦する。

ところで、解説室のジンクスが今も続いているのかどうか、こればかりは時を経てみなければわからない。