近代将棋1997年6月号付録、「初めての棋戦優勝シリーズ 羽生善治四段初優勝編」、カメラマンの炬口勝弘さんによる1987年の第10回若獅子戦第六局(羽生善治四段-富岡英作五段戦)のフォトドキュメント「羽生、雁木でガンガン」より。
奇しくも昨年度と今年度の「将棋大賞」新人賞、勝率第一位賞受賞者同士の対決となった。羽生四段の場合は、厳密にはこの時点でまだ決定してはいなかったが。
二人の新人については、すでに多く語られているが、きわめて個人的なことを記せば、羽生四段は我が愚息と同じ高校二年生なので、常にその所作言動に特別の関心を秘かに抱いてきた。昨春の入学式には、息子のそれは欠席しても、羽生四段の方は、カメラ片手に”出席”した。母君にもお会いし「公立に入れるとはいいですね。ウチなんか偏差値が低すぎて、単願で私立の工業高でした」と嘆いたら、なんとそれはご主人、つまり羽生少年の父君の母校だったりして、思わず絶句してしまった想い出がある。
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一瞬の間があって、その後、羽生二冠のお母様が、「あらいやだ、炬口さん、そこはうちの主人が出た学校なんですよ」と大爆笑しながら語っているシーンが想像できる。
”思わず絶句”とは、まさにこのようなシチュエーションのために創られたのではないかと思うほど、ピッタリとした言葉だ。
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炬口勝弘さんが撮った羽生二冠の高校入学式の時の写真がある(近代将棋1989年6月号掲載)。大勢の中にいる羽生少年の一瞬の表情をとらえた素晴らしい写真だ。