打ち上げの席で山崎隆之五段(当時)が渡辺明五段(当時)に話したこと

将棋世界2004年2月号、日本経済新聞記者の神谷浩司さんの「棋士たちの真情 天才の系譜を継ぐ者―渡辺明五段」より。

 王座戦本戦では、行方尚史六段、佐藤康光棋聖、森内俊之九段(現・竜王)を撃破し、挑戦者決定戦に駒を進めた。関西将棋会館で指された阿部隆七段との挑戦者決定戦、渡辺は対局開始の20分ほど前には盤の前に座っていたが、緊張した様子は全くなかった。将棋は、渡辺が細い攻めをうまくつないで押し切った。10代でのタイトル挑戦は、羽生、屋敷伸之八段に次いで史上三人目の快挙だ。

 五番勝負に向けての抱負を聞かれ、「一局でも多く、いい将棋を指したい」と述べている。どんなにいい将棋を指していても負け続けたら三局で終わってしまう。「一局でも多く」という言葉には、強いプロ意識を感じさせた。

 挑戦者決定戦の打ち上げの席に、渡辺のライバルと目される関西のホープ、山崎隆之五段も顔を出していた。山崎は「自分はまだ将棋界に支えてもらっているけど、これで渡辺君は谷川先生や羽生先生と同じように、将棋界を支える側の人間になった」と声をかけた。渡辺はぽかんとした表情で聞いていたが、山崎の言葉は先々、渡辺の胸にじわじわと染み込んでいったのではないだろうか。

(以下略)

—–

山崎隆之五段(当時)がこの王座戦挑戦者決定戦の打ち上げに来る前の 関西将棋会館での様子は、故・池崎和記さんが近代将棋で書いている。

「いや、それはちょっと・・・」

「自分はまだ将棋界に支えてもらっているけど、これで渡辺君は谷川先生や羽生先生と同じように、将棋界を支える側の人間になった」という言葉も、特に同年代近くのライバルに対してはなかなか言えるものではない。

山崎隆之五段は、この言葉を渡辺明五段(当時)に伝えたいがために、打ち上げ会場へ向かったのかもしれない。

テレビドラマのように格好いいシーンだ。

 

タイトルとURLをコピーしました