「丸山君にそっくりの女性がいるんだけど、会ってみないかね」

将棋世界1998年2月号、河口俊彦六段(当時)の「新・対局日誌」より。

 夜戦に入った大広間では、丸山七段が勝勢。勝ちを決める直前、身体をすこし浮かせて前後に揺すっている。そのとなりでは青野九段はちいさくあくびをしていた。

 そういえば控え室で「丸山君にそっくりの女性がいるんだけど、会ってみないかね」と言ったら「えー、丸山君みたいなんですか」 「物静かで感じのよい娘さんなんだよ」 「でもねえ」と乗ってくる若手はいない。唯一先崎君だけが「それは興味あるな」。こちらの方面から丸山七段の将棋を探ってみよう、というわけか。

(以下略)

——–

きっと、河口俊彦六段(当時)は、「棋士でいえば丸山君のような、物静かで感じのよい女性がいるんだけど」と、内面的な部分が丸山忠久七段(当時)と似ているということを言いたかったのだろう。

しかし、「丸山君にそっくりの女性」と簡潔に言われると、外見が似ているのかと思ってしまうわけで、これは「西島秀俊そっくりの女性」と言われても同じことだが、やはり男性に似ているというと、ほとんどの男性は引いてしまうと思う。

さらに丸山七段の棋風は激辛流。

河口俊彦六段は面白がってこのような表現を使ったのかもしれないが、なかなか人騒がせな言い回しで可笑しい。

——–

この日の控え室にいたのは、高橋道雄九段、森内俊之八段、土佐浩司七段、有森浩三六段、先崎学六段、中井広恵女流五段など。(段位は当時)

若手といっても丸山君と呼べるのは同じ年以上のことになるので、「えー、丸山君みたいなんですか」と言ったのは、森内八段である可能性が高いかもしれない。