今年の5月29日に亡くなられた元・近代将棋編集長で将棋ペンクラブ幹事の中野隆義さんから、このブログのコメント欄に寄せられた数々の棋士のエピソードより。
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「米長邦雄永世棋聖逝去」への中野さんからのコメント。
米長流とは囲碁を二局教わったことがありました。手合いは確か五子であったかと思います。一局目は私めが三十半ばのころでしたか。こちらは石をたくさん置かせてもらって出だしに絶大な勢力差を誇っているはずなのに、なぜか最初っから攻められっぱなしでした。
何カ所かでこちらがさんざんな目にあって上手必勝の局面となったころに「君は、文章は面白いけど、碁はまったく面白くないね」と言われました。続けて「ま、よく言えば冷静なんだけどね」とも。
二局目は、将棋連盟より五段の免状をいただいたときでしたから、あれは六年ほど前のことになりましょうか。そのときは、もしかしたら免状差し上げ記念にゆるめてくれちゃうのかなと思ったのですが、これがとんだ素人のあさはかさでして、一局目のときよりさらにこっぴどい目にあってしまったのでした。ただ、私めが上手の好戦的態度に必死にあらがったのを見ていてくれたのか「面白い碁を打つようになったね」とのお言葉
を頂戴しました。
米長流には、碁は地を囲うものではなく石と石との戦いにある、ということを教えてもらいました。
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米長邦雄永世棋聖が亡くなられてから5年が経つ。
2012年12月16日(日)が衆議院議員総選挙で自民党が大勝、民主党が大敗。
17日が、私がNHK杯戦の観戦。
18日が米長永世棋聖が亡くなった日
ということで、本当に動きがある3日間だった。
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「福崎文吾四段(当時)に起きたハプニング」への中野さんからのコメント。
福崎流の警備員に足止めされ事件。そいのがありましたね。懐かしいです。
その話を伝え聞いたとき、福崎流ならあるある、と思ったものです。
福崎流の対局姿を始めて目の当たりにしたのは彼が四段にあがってすぐのころだったでしょうか。まず、あれっと思ったのは、戦う人の雰囲気がまるでないなということでした。
肩で風斬る風もなく、相手を威圧する風はさらさらなく、ましてや殺気などみじんも感じられません。
これでは、テレビ東京のスタジオがある建物の入り口で、ガードマンさんに、ちょっとあなた何しに来られたのと呼び止められるのは必定であります。
極度の人見知り症福崎流は「はあ。あの。その。今日はあの。ボク大阪からですね。その。将棋の対局をですね・・・ふにゃふにゃ」と応えるのが精一杯だったのでしょう。これでは、ふにゃふにゃの部分は「やりにきた」ではなく「見に来た」ととられてもいたしかたありません。
ガードマンさんから直接聞いたわけではありませんが、福崎流がしどろもどろの中で大阪からと言ったのがガードマンさんの心を掴んだ絶妙の一手であって、大阪から来たのでは追い返すわけにもいかんなあと思ってもらえたのでしょう。なんとかかんとか対局にこぎ着けることができてよかったです。
きたろう
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テレビ東京の本社が東京タワーの麓にあった頃、局舎の入口近くまでは自由に立ち入ることができたので、歌番組の収録があるような時は、出入り待ちの女性ファンが大勢並んでいることが多かった。
1980年代前半、仕事でテレビ東京へ行った時のこと。
局舎前の道路でタクシーを降りて玄関に向かう途中、「エェー、今日は誰も連れて来ていないんですかー」と、芸能プロダクションのマネージャーに間違われたことがあった。
タレントには間違えてもらえなかったようだ。
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「阪田三吉の憂鬱」への中野さんからのコメント。
棋士は、その真価もさることがなら働きぶりさえも認識してもらいずらいですからね。
三十年ほど前に、マージャンの井出洋介名人を看板にした、ファミリーコンピュータのマージャンゲームソフトが出まして、それをマージャン好きの滝誠一郎流に紹介しましたところ、一週間ほどして滝流がそのカメレオンのような目をかっと見開いて将棋世界編集部の私めのところに迫ってきました。ひやーっつ、オレまた何かやっちゃったかな、と亀のように首をすくめていますと、滝さんはいきなり私めの手を取って「なかのっさん。ありがっとう。初めて子供たちに尊敬されました」と言ったのです。
聞けば、息子さんが手こずっていたマージャンソフトの中に出てくるキャラクターを、滝さんがことごとく撃破して見せた、のだとか。
そのころの滝さんはB級2組に昇っていたと思いますから、家庭を支える父として十分な働きをしていた、にもかかわらず子供さんたちからは冷たい目とまではいかなくとも残念ながら尊敬はしてもらえていなかったんですね。
これは、内藤流がどこかで書いていたことですが、「将棋指しが家にいて何もせずじっと考えているときが、棋士として非常に重要な仕事をしているまさにそのときなのだが、傍目からは何もしていないようにみえてしまうところが辛いところである」と。
家で盤に向かう三吉が子供たちから面罵を浴びせられていたなんて。寂しかっただろうなあ。涙が出てくるようなはなしです。
西の空に向かい黙祷。現代の一流棋士はあなたの残した棋譜を見て、力戦を得意としながら受けの渋い好手がよく見られる将棋、と認識しています。
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このファミコンソフトは1987年にカプコンから発売された『井出洋介名人の実戦麻雀』。
調べてみると「勝てば実力。負ければベンキョー」がキャッチコピーだったということだが、これは十分に将棋でも使える言葉だだ。
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真部一男八段(当時)「中原・米長それぞれの羽生世代対抗作戦」への中野さんからのコメント。
河口流の論評は、とても興味深いです。
そういえば、阿佐田哲也が「自分の欠点をうまく育てないと、良い欠点にならない」というようなことを言っていましたですね。
私めはつい最近まで、欠点とは直すべきものと思っていましたが、還暦を過ぎた頃からですかねえ、たまーに、欠点を育てるってのも大事なんだなあと実感できるようになりました。
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長所の裏返しが短所、短所の裏返しが長所。
「自分の欠点をうまく育てないと、良い欠点にならない」は非常に良い言葉だと思う。