駒音コンサートによって起きた波紋

将棋マガジン1985年2月号、「駒音コンサートに波紋?」より。

 素晴らしい催しだった駒音コンサートだが、変なところに波紋を呼んでいる。棋士は負けず嫌いで、囲碁でも誰それの何段はおかしい、と大騒動になるから、棋士には免状を出さないでほしい、と日本棋院にお願いしたという逸話もある程。それがこのコンサートで歌の段位が認定されたのだ。二上九段が三段。田中(寅)八段が四段。谷川名人が五段。まず二上三段が「けしからん」。田中四段も「絶対変だ」と怒っている。

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第1回駒音コンサートが1984年12月4日、東京虎ノ門のイイノホールで開催された。

当日の出演棋士と認定された段位は次の通り。

谷川浩司名人 哀愁のカサブランカ→五段
米長邦雄三冠 上海帰りのリル→三段
加藤一二三王位 この道→三段
二上達也九段 歩→三段
森安秀光八段 兄弟船→五段
田中寅彦八段 昴→四段
芹沢博文九段 憧れのハワイ航路→四段
内藤國雄九段 古城→別格。歌い終わった後、審査員席へ

結果的には三段階評価なので、五段=優、四段=良、三冠=可ということになるのだろう。

そういった意味では、”マイク二上”と呼ばれていた二上九段が三段に認定されて「けしからん」と思うのも無理はない。

田中寅彦八段(当時)が「絶対変だ」と言うのは、谷川浩司名人(当時)の方が上の段位だったから。

第1回なので、それぞれ歌には自信を持つ棋士が出場したわけで、なおかつ負けず嫌いの勝負師たち。歌の段位認定は悪手と認められたか、第2回以降は段位認定はなくなっている。

第1回駒音コンサート