将棋マガジン1986年3月号、川口篤さん(河口俊彦六段・当時)の「対局日誌」より。
記者室で雑談していると石田が入ってきた。
「勝浦さんが実にうまく指しているねえ」と言う。こういうときは自分のことを聞いてもらいたいのだ。
「あなたはどうだった」
「ええまあ」
ニコニコしいる。だれかが「次の一手みたいな妙手が出ましたね」と持ち上げた。待ってました、とばかり「並べてみましょうか」と盤の前に座った。
相手は鈴木輝彦。筋のよい者同士の戦いだから、華麗な戦いとなっている。ホウ、という歓声があがるたびに石田の講釈が出るが、それは割愛して、自慢の一手は2図の△7五桂だ。
▲7五同歩なら、△5六角▲同金△7六桂。▲7五同銀なら△同歩と取って次の△7六歩がきびしい。見事な決め手で、2図までで将棋は終わっている。
(以下略)
* * * * *
「こういうときは自分のことを聞いてもらいたいのだ」
この阿吽の呼吸が絶妙だ。
石田和雄九段のボヤキも最高だが、このような、自分の指した妙手を話したくて話したくて仕方がない様子も、とても面白い。
石田和雄九段は最高のキャラクターだといつも思う。
* * * * *
今日は石田九段一門の新年会の日。
ファンの方も交えて、大いに盛り上がることだろう。