仕事帰りの電車で読む観戦記

将棋マガジン1986年9月号、「公式棋戦の動き 勝ち抜き戦」より。

 日刊ゲンダイの観戦記をよく書かれている東公平氏によると日刊ゲンダイは、夕刊紙だけに夕方読むための観戦記を書かねばならないという苦労があるそうだ。

 朝刊は、朝、家で朝食を食べながら読む。一方、日刊ゲンダイのような夕刊紙は仕事を終えたサラリーマンが、帰りの電車の中で読む。そうなれば、おのずから観戦記の質も変えなければならないわけだ。

 一つの棋譜をただ見せればいいというわけにはいかない。そこに観戦記を書く人の苦労もあるのだろう。

(以下略)

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たしかに、多くの新聞観戦記は朝読まれる確率が高い。

夕刊に載る観戦記なら帰宅後。

夕刊紙は帰りの電車の中。

週刊誌は電車の中か家に帰ってから。

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昔、酔っ払って家に帰って、日本経済新聞夕刊の又四郎(高柳敏夫名誉九段)の王座戦観戦記を読んで、「クソッ、泣かせるな」と涙が出そうになることが何度もあった。高柳敏夫名誉九段が酔っ払い向けに書いているわけでは決してないので、人それぞれ、それぞれの状況で観戦記を読んでの感じ方は様々なのだと思う。

ただ、一つ言えることは、酔っ払っている時は棋譜の解説は飛ばして読んでいたということ。

そういった意味では、仕事を終えたサラリーマンが帰りの電車の中で読むことを想定した場合、棋譜の解説は極力少なめにして、エピソード中心の柔らかめの観戦記が適しているということになるのだろう。

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もっとも、日刊ゲンダイや夕刊フジなどの夕刊紙は、紙面全体が仕事を終えたサラリーマンが帰りの電車の中で読むのに適した編集方針になっているだろうから、朝読むから、帰宅時に読むからというよりも、その印刷媒体に合った書き方が求められると考えた方がわかりやすいかもしれない。