村山聖九段が初段になる前の頃

近代将棋1985年10月号、「関西奨励会」より。

 さて今月は有段者にまた一人仲間が増えた。村山が待望の入品を果たしたのである。この男面白い男で、昇段する前まだ16歳だというのに「年齢制限の20歳までにあと3年しかない、どうしよう」と本気でアセッテいた。この年齢で普通そんな事は考えない。えらく心配症だ。

 かといって気が弱いわけではなく、人の将棋批判などは自信たっぷり。「今度入ってきた○○の将棋どうや」と聞くと、黙って顔の前で2~3回手を振る。通訳すると、たいしたことない、となる。「肉丸君」の愛称で皆に好かれる村山初段。これからの成長が見ものだ。

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「年齢制限の20歳までにあと3年しかない、どうしよう」

満21歳の誕生日までに初段になれなかった場合は退会となるので、その年齢制限のようにも考えられるが、『聖の青春』には、平成元年の6月、森信雄五段(当時)が麻雀を打っている雀荘に村山聖五段(当時)が訪ねてきて、しばらくしてから「僕、今日20歳になったんです」「20歳になれて嬉しいんです。20歳になれるなんて思っていませんでしたから」と師匠に話す情景が描かれている。

「年齢制限の20歳」が、自分が生きていられるであろう期間のことを意味していたように思えてならない。