羽生善治五段(当時)の「昇級者喜びの声」

将棋世界1988年4月号、羽生善治五段(当時)の「昇級者喜びの声」より。

将棋世界同じ号のグラビアより。

 C級2組は53人という大世帯ですから、色々な意味で大変です。

 そういう意味では昇級することが出来た自分は非常に幸運だと思います。

 今期、開幕前に感じていたことは、”今期は2期目なので順位も上がるので何とか上がりたい”ということでした。

 しかし、開幕すると山あり谷ありの連続でした。

 その中でも特に印象に残っているのは、第8回戦の大島映二五段との一戦で、図がその局面です。

 見て頂ければ解るように、僕の不利です。駒の働き、玉の堅さ、駒の損得、等の要素を考えれば、一目瞭然です。

 ただ、後手は歩切れなので、それだけが唯一の楽しみです。

 そこで、▲3九桂と受けにまわりました。

 結局、これがうまくいったようで、何とか勝ち切ることが出来ました。

 これで、2番の内に1勝すれば昇級できるようになったのですが、やはり決定するまでは不安でした。

 自分ではプレッシャーがかかっていないと思っていたのですが、やはり、かかっていたようです。

 とにかく、これで今期のとりあえずの目標であった昇級することが出来てホッとしています。

 さて、来期以降ですが、上のクラスへ行けば行くほど厳しくなるので、さらに気を引き締めて行かなければなりません。ですから、これからも一層努力して行かなければなりません。

 今の気持ちとしては、来期の順位戦が始まるまでは、ゆっくりしていたいのですが、そう怠けてばかりもいられないので、”よく学び、よく遊べ”でけじめをつけて行ければいいなあと思っています。最後になりましたが、応援してくれたファンの方々、本当にありがとうございました。これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

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「今期、開幕前に感じていたことは、”今期は2期目なので順位も上がるので何とか上がりたい”ということでした」

羽生善治九段がタイトル戦などで勝負にかける意気込みを聞かれたときに、多くの場合「一局一局を大切に指していきたい」と答えている印象が強いので、若い頃の、このような(相対的に野心的な)言葉は新鮮に感じられる。

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現在のC級2組が52人なので、この頃とほとんど同じ人数だ。ただし、フリークラス制度はなかった時代。

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この期のC級2組は、羽生善治四段(当時)と泉正樹五段(当時)が9勝0敗の時点でラス前で昇級が決まった。(最終的には二人とも10勝0敗)

そういうわけで、通常よりも1号早く、「昇級者喜びの声」が載っている。

泉正樹五段の写真は、野獣流が発揮されている。

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もう一人の昇級者は9勝1敗の村山聖四段(当時)。

翌月号に「昇級者喜びの声」が掲載されている。

村山聖五段(当時)「この4人のうち、一人でも居なかったら現在の僕は存在しなかっただろう」

写真は、一昨日の記事の写真。