将棋世界1988年6月号、「奨励会三段リーグレポート」より。
新三段の抱負
今回の新参加は7名。そこで、この7人に今回のリーグ戦を戦うにあたっての抱負、それと質問等を浴びせてみた。
まずは関西勢から。
―関東勢との対局、一戦交えた感想は?
平藤三段「棋風が分からず、とまどいを感じました」
―展開は、どのようになると思いますか?
「最後の最後まで、分からないと思います。ガンバリたいです」。
(中略)
残る一人、畠山鎮三段に話を聞こうとしたものの、畠山成三段と双子の兄弟なので、どちらか分からずじまい。そこで、近くにいた平藤三段に聞くと、「メガネを掛けている方が兄(成)で、そうでない方が弟(鎮)です」と。
―初めての三段リーグ、とまどいは感じましたか?
畠山鎮三段「関東の人の棋風が分からないのが…。でも、いざ戦いが始まれば、関係ない!」
―今回の戦い方などは?
「1期で、それも1位で抜けたい。ペース配分は特に考えてなく、一局一局を大切に戦う、ということです。ただ、高校を卒業して、生活のリズムが変わり、それがどう影響するか…」
次に関東勢。
―今回の戦い方、それと予想出来る昇級点は?
郷田三段「ガンバッて行くだけです。考えられるのは13~14勝。でも、13勝では順位が低いと危ないでしょう。長丁場ですが、連勝して突っ走って行きたい」
―どんな思いで、今回の三段リーグに挑みますか?
小倉三段「特に思いはありません。しいて言えば、棋風の分からない関西勢との対戦は、気にせずに戦って行きたいです」
―ズバリ、昇級ラインは?
「13勝5敗か14勝4敗ですね」
(中略)
―今回のメンバー中、最年少ですが、いかなる戦い方を?
屋敷三段「特に考えていません」
以上がインタビューの内容ですが、初戦の緊張からか、やや口が重くなっているのが感じ取れました。
(以下略)
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新三段の抱負が記事になるというのは意外と珍しい。
中学生になっての抱負、高校生になっての抱負、大学生になっての抱負、社会人になっての抱負はあるけれども、その一つ手前の新小学6年の抱負、新中学3年の抱負、新高校3年の抱負、新大学4年の抱負、は滅多に聞かないのと同様だ。
そのような状況もあってか、実戦的な回答が多い。
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関東勢は関西勢の、関西勢は関東勢の棋風が分からないことを挙げている。
奨励会員同士でも、相手の棋風を研究して対策を練っていたことがわかる。あるいは奨励会だからこそ、より強く、相手の棋風を意識していたのかもしれない。
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相手の棋風が分からないことを気にしていない郷田真隆三段、屋敷伸之三段の「特に考えていません」が、それぞれ個性が表れている。