将棋ペンクラブ会報「新春対談」余話(後編)

中井広恵女流六段と高田宏将棋ペンクラブ会長(当時)の対談の翌月、幹事会終了後の飲み会で、翌年の対談は林葉直子さんにお願いしてみようという話になった。実現できれば高田宏会長も喜んでくれる。

秋になったら、湯川さんから林葉さんに連絡を入れる段取りだ。

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その年の6月、将棋ペンクラブ幹事のWさんから、一緒に飲みに行こうと誘われた。六本木のライブハウスの割引チケットが手に入ったらしい。

そのライブハウスはビートルズ専門店で、私も2度ほど行ったことがあった。

男二人でアマンド前で待ち合わせ、芋洗坂を下りていく。 …ところが、私はビートルズよりはローリング・ストーンズのような不良度数が高い音楽のほうが好みなので、あまりビートルズには気乗りがしない。ビートルズを居飛車とするとストーンズは振飛車か。

歩いているうちに、林葉さんが経営するインド料理店「ウーカレー」が至近距離にあることに気がついた。

「ビートルズは延期して、林葉さんの店へ行ってみましょう」

私がそう言うと、Wさんも提案に乗ってきた。

私もWさんも「ウーカレー」は初めてだった。

(店の様子や料理はこのサイトの記事が詳しい→林葉直子さんのお店 本格インド料理「Woo Curry」

林葉さんがいた。生で見るのは初めてだった。

思わず来てしまったが、迷ったことが一つあった。

対談のお願いを今してしまうかどうか。

私の中では、直接交流のあった湯川博士さん、恵子さんから正式にお願いをしたほうが手堅いという思いが大きかったが、このままカレーを食べて帰ってしまったのでは、折角の機会なのに子供の使いになってしまう。敬愛する高田宏会長の顔も浮んできた。

Wさんとも打ち合わせて、対談のお願いをすることにした。

林葉さんが席に来てくれた。

「いらっしゃいませ。お店に来ていただくのは今日が始めてですか?」

私もWさんも緊張している。

「は、はい」

「将棋とか、指されるんですか」

「え、ええ。それはもう、」

「この店でも将棋ができるんですよ」

「実は、、私達は将棋ペンクラブで幹事のようなことをやっているのですが、突然ですがお願いしたいことがありまして… あっ、我々、決して怪しい者ではありません」

と言って名刺を渡した。これほど怪しい名刺の渡し方もない。

対談のことを話すと、林葉さんは快諾してくれた。

ホッと一安心。

その後、湯川さんたちと1回、知人たちと2回、「ウーカレー」へ行った。

「ウーカレー」という店名は「うー、辛え」が語源になっている。

残念なことに、「ウーカレー」はその年の11月に店を閉めてしまう。

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翌年、2006年2月に林葉直子さんと高田宏将棋ペンクラブ会長の対談が行われた。場所は、高田さんのご自宅に近い自由が丘の居酒屋。

とても良い対談だった。

林葉さんに何度かお会いして感じたことは、素顔の彼女は、将棋が大好きで中学の制服を着て東京へ出てきた頃のままの純粋な心を持ち続けているということだ。

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