面白い本

1986年に出版された湯川博士さんの「なぜか将棋人生」(朝日新聞社)が面白い。

絶版になった25年前の本を10年振りに読み返してみたのだが、面白いのだ。

この本は、湯川さんが足と体を使って取材した様々なことが書かれている。

テーマを抜粋すると次の通り。

その後の十三人

1971年秋に関東奨励会に入会した13人の、その後と今を追跡取材している。

この期でプロになったのは、武者野克巳七段、大島映二七段、 加瀬純一六段の3人だが、メインの取材対象は違う道を進んだ10人。

杜の都加部道場加部康晴さんもその一人だ。

それぞれの人たちの思いが語られている。

大道将棋ボーナス五十五万円強奪事件

1983年12月に、大道詰将棋をのぞいた人が、その日もらったばかりのボーナスを袋ごと奪われるという事件があった。犯人は逃亡したが、その後逮捕された。

湯川さんは警察や関係者に取材して、事件当日の様子を誌上で詳細に再現している。

泪橋のバラード

東京の山谷のドヤ街の真ん中に24時間営業の将棋クラブがあった。その将棋クラブでの人間模様が描かれている。

観戦記最前線

当時としては珍しい、観戦記者へのインタビュー。

将棋に憑かれた男

視覚が不自由ながらも舞鶴で将棋道場を営む引退棋士、西本馨七段への取材録。

華麗なだけじゃあ将棋は勝てん

内藤國男九段への直撃インタビュー。

新宿将棋事情

新宿の将棋道場、将棋ができる酒場の訪問記と様々な人間模様。

こんなサービスしています

笑顔の若い女性の写真と「いらっしゃいませ 秋葉原将棋センター デース」というコピーで、ある時期まで将棋世界や近代将棋にユニークな広告を掲載していた「秋葉原将棋センター」。そこへの突撃レポート。

好きでなくては―将棋雑誌盛衰記―

「将棋クラブ」、「将棋讃歌」、「将棋天国」など廃刊した将棋雑誌元編集者へのインタビュー。

ライターの世界

棋書のライターへの取材。

三浦三崎のマグロ名人―アマ将棋大会の裏方さん―

マグロ名人戦の世話役の人たちの話。

「南紀・将棋の旅」同行記

「大山康晴十五世名人と将棋の旅」の同行記。

ロスアンゼルス将棋の旅

ハワイで行われた棋王戦観戦ツアー旅行記。

囲碁と将棋はどう違う?

囲碁と将棋の比較レポート。

*****

視点が、いかにも湯川博士さん流だ。

当時でなければ書けなかったテーマが多いが、現代版「なぜか将棋人生」があっても面白いと思う。