昨日から行われている王位戦第6局の立会人は塚田泰明九段。
今日は、塚田泰明八段(当時)の有名なエピソードを。
先崎学八段の2001年に刊行されたエッセイ集「フフフの歩」より。
四月某日-今年の春(1996年)は棋士の結婚ラッシュだったが、それも今日で打ち止めである。昼過ぎから、塚田八段と高群女流二段の結婚式が行われる。
会場の都心のホテルに着くと、いやはや知った顔ばかりである。棋士同士のカップルなのだから、当然といえば当然だが、やはり驚いた。そのまま棋士総会ができそうである。なにしろ新郎側の主賓が大内理事で、新婦側の主賓が滝理事なのだ。
その滝さんのスピーチが良かった。滝さんは高群の師匠である。
「高群に、付き合っている棋士がいると聞いて、驚きまして、相手を訊いたら、塚田君だというので、私は、思わずヤッタとガッツポーズが出ました」(場内爆笑)
ようするに、塚田さんならば、悪いようにはならないということである。
つづいて、スライド映写による『南の島事件』の暴露(といったって業界で知らない人はいないのだが)があった。
南の島事件というのは、二人が付き合い真っ盛りの頃、沖縄に行って、台風にあって帰れなくなってしまった事件のことである。
二人は、テレビ対局の対局者と記録係として、収録を控えていた。だが飛行機は飛ばない。二人の行動は、初期の恋人達がおおむねそうするように、隠密であった。
進退窮まった二人は、仕方なく別々に将棋連盟に電話をした。
「高群ですけど、実は沖縄に来ていましてこれこれしかじか」
「塚田です。実は南の島にいましてこれこれしかじか」
バレたら困るというので言葉を考えたわけだが、二人とも嘘が得意な性格ではない。すぐバレるよ。これでは。
二人の熱愛は、親しい仲間内は感づいていた。帰って来た塚田さんに訊いた。
「一緒だったんですか?」
「いや実は・・・・・・(汗をふきふき)友達と二人で沖縄に行ったら、偶然同じ飛行機に彼女がいて、(またふきふき)向こうも女の子の友達と来ていて・・・・・・」
「泊まったホテルが同じだったと聞いていますが」
「そうなんだ、偶然同じホテルで」
そんなに偶然が重なってたまるか。
それにしても南の島というフレーズは見事だった。同行を認めるわけにはいかない男の苦悩と、嘘がつけない善良な性格とを見事に表わしている。
婚約してからの二人のアツアツぶりはとどまることがない。高群さん曰く、「最近、たまに喧嘩するの」。勝手にしやがれ。
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南の島、たしかに魅力的な言葉だ。
私は、日本国内で行ったことのある最南端が福岡市、世界中では香港が最南端。
南の島、南太平洋、などと聞くと、自分の目を通して実際に見たことのない場所のためか、非常にエキゾチックな印象に感じられる。
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かなり昔は、南太平洋のことを”南海”と呼んでいた。
昔の映画でも”南海”は、タイトルによく出てきた単語だった。
私が印象に残っている映画としては、「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」。
映画は見なかったが、エビラのプラモデルを買った記憶がある。
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怪獣史上、唯一、食べても美味しいと思える怪獣だった。
→Youtube「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」予告編
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今回初めて知ったが、東宝では「ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦 ! 南海の大怪獣」という映画も制作していたという。1970年の作品。
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ゲゾラは、カミナリイカをベースしたイカの怪獣。「ゲソ」が語源になっているのが明白だ。
ガニメは、当然、カニの怪獣。カルイシガニがモデルになっている。写真で見てもわかる通り、美味しそうなカニではない。
カメーバは、カメの怪獣。
シンプルでわかりやすい怪獣のネーミングだ。
この映画とは別に、東宝制作のTBS系「ウルトラQ」で、スダールという大ダコの怪獣も登場している。名前の由来は「酢ダコ」。
→Youtube「ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦 ! 南海の大怪獣」予告編
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話を戻して南の島。
升田幸三実力制第4代名人が太平洋戦争の時に召集されて向かった戦地がポナペ島。
ポナペ島は現在のポンペイ島で、ミクロネシア連邦の首都パリキールの所在地。
初めはスペインの植民地、1899年からはドイツが統治した。
日本が委任統治するのは第一次世界大戦後の1920年から。
スペイン、ドイツは過酷な植民地政策をとったが、日本は同化政策をとり、日本からの入植者が1万人を超える時期もあった。
太平洋戦争終了後、アメリカの信託統治領となり、1986年に独立している。
グアム島経由でしか行けないので一般的な観光地ではないようだが、本当にゆっくりとできる島なのかもしれない。