入籍ラッシュ

今年の夏は、船戸陽子女流二段、島井咲緒里女流初段、中村桃子女流1級と、女流棋士の入籍のニュースが続いた。

→中村桃子女流1級 婚姻届を提出 (毎日新聞)

横山五段&島井女流初段 棋士同士が結婚(スポーツ報知)

所属女流棋士 入籍のご報告(LPSA)

非常におめでたいことだ。

このような、将棋界の結婚・婚約ラッシュが1995年頃にもあった。

近代将棋1995年12月号、大矢順正さんの「棋界こぼれ話」より。

 いままで二十代の男性棋士の既婚者が皆無だったのが不思議な思いもする。

 花の五十五年組と言われた高橋道雄九段、南芳一九段、島朗八段、中村修八段等は皆結婚した。一人、塚田泰明八段が独身貴族を謳歌していたが、この春に高群佐知子女流二段と婚約を発表して年貢を納めた。

 前期の順位戦でB級陥落が決まった直後のプロポーズで「なんでまた、こんな時期に・・・」と高群二段を驚かせた。

 これが将棋界の「寿ラッシュ」の火付け役となった。

 羽生善治六冠王が女優畠田理恵さんと。噂にはなっていたものの電撃婚約に周囲は驚いた。タイトル戦ラッシュの最中によくもデートする暇があったものだと感心する。塚田、高群ご両人のデートコースはディズニーランドだったと聞くが、こちらは美術館、図書館巡りだったとか。

「本当は羽生さんの家の近くの代官山周辺だった」と畠田さんがこっそり告白してくれた。

 九月に入って藤井猛六段がグループ交際していた囲碁アマ五段のお嬢さんとの婚約を明らかにした。元々は真田圭一五段が慶應大学の囲碁部の女性たちを連盟の野球部の合宿に招待したのがきっかけだったようだ。

 この三組は、みな将棋会館で両者揃って記者会見した。将棋界では連盟で婚約発表したのは真部一男八段以来ではないだろうか。騒がれた谷川浩司王将の婚約発表も婚約者は写真だけだった。

 また、三組は揃って来春挙式の予定。藤井組が三月の末、塚田組が四月の上旬だが羽生組は未だ発表されていないが、名人戦前後が有力。

「これは、三月から挙式ラッシュとなりご祝儀破産しそうだ」なんてジョークまで飛び出している。

 おめでたい話なのにそれはないよネ。

 これで寿ラッシュが終わったわけではない。春まで待てず(?)にさっさと入籍した棋士もいる。

 九月になって飛び込んできたのが依田有司五段が入籍済のニュース。

 こちらは依田五段の自宅近くで夫婦で飲食店を経営しているお嬢さんで歯科医助手。依田五段より十一歳年下というから、独身中年棋士が地団駄を踏んで悔しがりそうなお話。

「三十を過ぎて結婚は半ば諦め気味だったが一点買いで万馬券を当てた心境」とのろける。

 そして十月になってもう一組。

 ことしの三月に四段昇段した北島忠雄四段だ。昨年、三段リーグで昇段を逃した北島四段はインドに傷心旅行したときにツアーで知り合ったお嬢さんで、こちらは銀行に勤務の二歳年上の姉さん女房となる。晴れて四段昇段を果たしたことで八月に日比谷公園の噴水の前でプロポーズした。ところがその日に限って「水入らず」の二人とあって噴水の水が出ていなかったとか。

 北島四段は、春に四段昇段祝いをしてもらったばっかりとあって、またみなさんにお祝いしてもらうのは気が引ける、とあって公表を控えていた。

(中略)

 さて、五組のおめでたを紹介したが、今年はまだ二ヵ月ある。事情通の話ではまだ三組は誕生しそうだという。

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「まだ三組は誕生しそうだ」と書かれているが、当然のことながら、”誰が”とは明かされていない。

ところが、大矢さんがこの記事を書いた前の号で、中川大輔六段(当時)が、今から考えれば意味深なことを書いている。

中川大輔六段(当時)の近代将棋1995年11月号の「仕掛けのタイミング」より。

 今年は暗いニュースがあいついでいましたが、我が将棋界の方は明るいニュースが続いています。

 まず春先に塚田八段と女流の高群さんが婚約を発表しました。続いて羽生名人が女優の畠田理恵さんと。そして九月には後輩の藤井六段が土屋さんと婚約発表しました。

 土屋さんは「キングス」の試合によく観戦に来られていました。おにぎりやサンドイッチなどの差し入れをしながら。

 明るい女性で、なかなかしっかりしたところがあり、面倒くさがり屋の藤井君(失礼!)にはぴったり。まずはおめでとう。

 しかし、これからが大変。うっかり黒星が増えようものなら、観戦記者のだんながたに何を書かれるかわかりませんぜ。

 それにしてもこの婚約ブーム。まだ続きそうな気が・・・。

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中川六段は、1996年に囲碁棋士の宮崎志摩子三段(当時)と結婚する。

「まだ続きそうな気が・・・」が、今だから思うことだが、非常に力強く自信に満ちて感じられる。