羽生善治二冠も”怪物”と呼ばれている時代があった。
将棋マガジン1990年1月号、巻頭グラビア「第2期竜王戦第3局 立ち上がれ、羽生よ!」より。
(顎に扇子を押し付けて考える羽生挑戦者の写真)
どうも今シーズン、らしさが見られない。さすがの怪物も、雰囲気にのみこまれているのか
羽生善治二冠にとって初のタイトル獲得となった1989年竜王戦(島朗竜王-羽生善治六段)。
4勝3敗1持将棋で羽生六段が竜王位を見事に獲得することになるが、第3局は島竜王の強い所ばかりが目立つ一局で、羽生六段は敗れてしまう(羽生六段の1勝2敗1持将棋)。
しかし、「さすがの怪物も、雰囲気にのみこまれているのか」は、今では想像することもできないような大胆な表現だ。
この時、羽生六段は19歳。
それほど当時は、”羽生善治”という棋士の出現にインパクトがあったということだ。
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一方、将棋世界1994年2月号、巻頭グラビア22頁は、
「プリンス郷田、日本シリーズを初制覇」
この当時の郷田真隆九段は五段だったが、前年の1992年には王位を獲得している。
プリンス。いい響きだ。
郷田九段には、”王子”ではなく”プリンス”がよく似合う。
この時、郷田五段は22歳。
羽生二冠とは違った雰囲気でのインパクトのある新人という位置付けであったことがわかる。
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10代であれば怪物、20代前半であればプリンス、これがスポーツ界や将棋界での最大級の褒め言葉になるのかもしれない。
キングだと、中高年っぽくなってしまう。
女性の場合だと、
10代でエンジェル、20代前半でプリンセスとなるのだろうが、クィーンという素晴らしい単語がある。
女流棋戦で永世称号を獲得すると、「クィーン名人」、「クィーン王位」などと称される。
クィーンは女王なので男性にとってのキングと同格になるが、クィーンには中高年っぽいイメージが全く感じられない。
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キングやクィーンというとチェスを思い浮かべてしまうが、チェスでもキングよりクィーンのほうが格好良い。
クィーンというメジャーバンドは存在するが、キングという名のメジャーバンドはない。
ABBAの「ダンシングクィーン」も「ダンシングキング」という曲名だったならあれほど流行らなかっただろう。
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ところで永世女王になると「クィーン女王」となるのだろうか。
これはこれで良い称号だと思うが、どうなるのか興味深いところでもある。