将棋が強くなるための秘術

近代将棋1994年5月号、中川大輔五段(当時)の「中終盤のトレーニング」より。

 よくアマの方に

 「どうしたら強くなれるでしょうか?」

 という質問を受けます。

 誰もが知りたいこの答え。よく言われる上達法は、強い人と指す、詰将棋を解く、などです。これは正しい。

 しかし、質問の答えにはならない。何故なら、わざわざ質問してくるような方は、そんな事は百も承知だからです。

 「どうしたら強くなれるか?」

 私はこの質問には逆にこう聞き返します。

 「将棋は好きですか?」

 すると十人中十人が「ハイッ」と答える。それで充分なのです。いや、それ以外ないと言ってもいいでしょう。

 将棋が本当に好きなら、どんな勉強をしても吸収してしまうからです。

 最近、囲碁の藤沢秀行先生の本を読んでいたら、こんな文が目に入りました。

 『(強くなるには)ただ好きを超えて、碁に真の愛情をもつということではないだろうか。碁を覚えて夢中になるのは、男女の恋愛感情みたいなものだ。それはそれで素晴らしいし、それがなくては始まらない。ただその愛をより深め育てていくためには、対象をもっと理解する必要もあるし、敬う気持ちも大切だろう。当然その希求も生まれてくる。碁をもっと愛しなさい。熱烈でなくてもよいから、細くとも長くね。そのうちに見えなかったものが見えてくる』

 私の答えは間違っていなかったようです。

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将棋の上達法。

「将棋が本当に好きなら、どんな勉強をしても吸収してしまうからです」は名言だと思う。

特定の異性を好きになった時のことを思い出すと、意味合いは違うものの非常に納得できる。

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自分自身を振り返ると、中学生時代は、「大野源一八段(当時)の三間飛車」、「石田流」、「次の一手」の三分野が大好きで、結果的に三点集中主義で勉強していたように思う。

それらに熱中したあまり第一志望の高校に落ちて、それに凝りて将棋からは15年ほど離れることになるのだが、長いブランクがあっても将棋連盟道場ですぐに二段にまでなれたので、中学生の頃の勉強だけでどうにかなった形だ。

将棋も分野が広いので、自分の好きな特定分野だけを集中的に勉強するというのも、一つの有効な方法なのかもしれない。

とはいえ、現在の私は、石田流か▲7八金(△3二金)型向かい飛車しか指さない非常に偏った人間になってしまっているので、皆様もお気をつけください。