将棋世界1999年1月号、木屋太二さんの「三浦弘行新人王にインタビュー」より。
―新人王戦優勝おめでとうございます。
三浦「ありがとうございます」
―決勝三番勝負は2-0のストレート勝ち。内容もよかったですね。
三浦「決勝戦までは拾い勝ちが多くてツイてるなと思っていました。三番勝負は負けて元々の気持ちがあったので気楽に指せました」
(中略)
―畠山成幸六段が投了した時は?
三浦「もう少し粘る順があったので意外な気がしました。ここで決めたいと思っていたので連勝での優勝は本当にうれしかった」
(中略)
―ところで西村一門の活躍が何かと話題になっています。竜王戦でブレイク寸前の藤井七段。最年少女流プロの藤田綾ちゃん。そして三浦新人王……。
三浦「藤井さんの活躍ぶりはすごいですね。私も『藤井システム』の本を買って勉強しています」
―同郷・同門。ライバル意識は?
三浦「藤井さんは奨励会時代から常に私より先行しています。藤井さんは人間も将棋も手厚い。目標にしている棋士です」
―お二人とも研究家というところがよく似ていますが?
三浦「研究好きなのは相手が近くにいなかったからということもあります。私の場合は一日10時間やってたこともありますが今は毎日ではなく、ある時期に集中してやります。パソコンと盤を使って。研究会に入らない研究家の藤井さんと私は群馬風といったところでしょうか(笑)」
―2年前の棋聖戦で羽生さんがタイトルを取りました。羽生七冠を168日で倒した男と話題になりましたが?
三浦「3年前に挑戦した時は羽生さんが七冠を目指していたころ。あの時の五番勝負は3連敗でストレート負けを喫しました。全然歯が立ちませんでしたね。翌年の挑戦は羽生さんが七冠を達成していました。目標がなくなったので去年より本気でやってこないんじゃないか。そんなことを考えていました」
―1勝2敗から2連勝で初タイトルをゲット。その時の気持ちは?
三浦「当時は自分も意外にやれるんじゃないかと勘違いして舞い上がってしまいました。それから成績が落ち込みました。今、冷静に考えると、あれはマグレでした」
―ビッグタイトルを取ってから新人王は手順前後のような気もしますが?
三浦「タイトルを取った人が新人王になる。これは初めてのことらしいですね。しかし私は過去に新人王戦で好成績をあげたことがない。新人王戦は藤井七段、深浦六段、先崎六段、中川六段、ほかにも若手の実力者がたくさん出ています。キツイ棋戦ですから優勝できたのは本当にうれしい。素直によろこんでいます」
―今後の目標は?
三浦「もっと実力をつけたい。実力をつければ成績も自然についてくる。タイトルも……と思っています。今回の新人王戦の優勝を弾みにしたいですね」
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三浦弘行六段(当時)の新人王戦優勝、藤井猛七段(当時)の竜王位獲得、藤田綾女流2級(11歳)のプロ入り、という西村一義九段門下の慶事がほぼ同時期に重なったのだから凄いことだと思う。
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「私も『藤井システム』の本を買って勉強しています」、「藤井さんは人間も将棋も手厚い」が、いかにも三浦弘行九段らしい微妙な面白さ。
人間が手厚いという言葉、今度機会があったら使ってみよう。