将棋世界2004年12月号、野村隆さんの第15期女流王位戦五番勝負〔清水市代女流王位-矢内理絵子女流四段〕第2局観戦記「急転直下の結末」より。
投了寸前の局面から清水が大逆転。またしても矢内は好局を落としてしまった。逆に見れば第1局に続き清水の精神力が光る一局だった。
日本酒が好きだと言う清水は普段、局後の打ち上げでは1合ほど飲むこともあるそうだが「今は胃腸(いちよ)の調子が悪いので…」とこの日はノンアルコール。
打ち上げ後のカラオケの席には途中から矢内も顔を見せて、ちあきなおみの「喝采」、中島みゆきの「ひとり上手」などをハスキーボイスで熱唱。「ジャズシンガー向きの声だ」と関係者のあいだで評判だった。
(以下略)
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「胃腸(いちよ)の調子が悪いので」は、なかなか思いつかない鋭い手筋だが、清水市代女流六段ならどのような時にも使えるネタだ。
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ちあきなおみさんの「喝采」は、1972年の日本レコード大賞受賞曲で、矢内理絵子女流四段(当時)が生まれる8年前の曲。
対局場は有馬温泉、矢内女流四段の選曲が渋い。
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ちあきなおみさんは、1992年に夫の郷鍈治さんが亡くなってから、芸能活動を休止している。
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1978年だったか1979年、東京・広尾(住所は南麻布)に、結婚したばかりのちあきなおみさんと郷鍈治さんが経営する喫茶店ができた。
大学へ通う時の最寄り駅の至近距離にあったので、二度ほど一人で入った記憶がある。
郷鍈治さんは宍戸錠さんの弟で、格好の良い悪役が似合う俳優だった。
郷鍈治さんがマスターをしており、やはり、初めて入った時は(あ、テレビで見た通りの顔だ)と思ったものだった。
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芸能人も棋士も、初めて会った時は、意識しなくても深層心理で(あ、テレビで見た通りの顔だ)と思っているもの。
初めて生で見た時に、テレビで見るよりもずっと実物のほうが格好いいと思うケースもあり、個人的にはその代表例が、1984年の歌手の岩崎宏美さん、2003年の佐藤康光九段、2005年の中井広恵女流六段だった。