「矢倉は難しくて、わからない」という理由

近代将棋1977年1月号、青野照市五段(当時)の「矢倉のすすめ」より。

「矢倉は難しくて、わからない」

 この言葉は、初級者だけでなく、アマの高段になった人からでさえ、聞かれます。

 では、なぜ矢倉戦法は難しくて、わかりにくいのでしょうか。

(中略)

  この振飛車の戦いのように、戦いは戦い、寄せは寄せというように、区切って進んでいく将棋の方が、わかりやすいといえます。

 従って矢倉の難しさとは、

  1. 序盤の作戦に苦労し、ヘタをすると駒がぶつからないうちから、悪くなっていることがある。
  2. 戦いが始まると、戦線が局面全体に広がり、考えにくくなる。
  3. その際、受けるべきか攻めるべきかという、攻防のアヤが難しく、攻めすぎると切れてしまい、受けすぎるとツブれてしまう。

というような点が、あげられます。

 しかしそれだけに、矢倉には将棋の本質、基本となる考え方が多く含まれており、ある程度マスターすることによって、将棋そのものの力がつくのではないかと思います。

(以下略)

* * * * *

これは矢倉だけに限らず角換わり腰掛銀、横歩取り、相掛かりにも共通していると思う。(この講座は矢倉全盛時代に書かれており、矢倉以外の居飛車はあまり指されていない時期だった)

ただ、角換わり腰掛銀、横歩取りは激しい戦いにすぐに突入することが多いので、観るという観点からは、じっとりとした戦いが長く続く矢倉とはイメージが異なる。

しかし、自分が指すということになると、やはり1~3が重くのしかかってくる。

アマ高段者を除くアマチュアに振り飛車党が多いのも、1~3の逆の理由によるものだと思う。