小池重明アマ名人(当時)「歩が3枚あればと金が3つ出来る。残りの駒は受けに使え」

近代将棋1982年6月号、小池重明アマ名人(当時)の連載随筆「将棋と酒」より。

小池流独断と偏見の将棋に強くなる法

○将棋を最愛の彼女だと思うこと

 好きになればだれでも大事にしたい。そういう想いは相手にも通じるものである。そうすれば対局前に盤をふいたり、駒をきれいに並べることもできるはず。着飾ってやらなければ……。

○三つ数えてから指す

 私もノータイムで指して今迄に何回アッという声を出したか。横断歩道と同じ。事故に合わぬよう。

○直感を大事にすること

 いろいろな手が浮かんで読んでみると最初に浮かんだ手が最善手の場合が多い。しかしこれは経験(実戦)がなければうまくいかない。要は沢山指すこと。体で覚えることである。

○あきらめるな、粘れ、頑張れ

 彼女をくどくときと同じ。歩が3枚あればと金が3つ出来る。残りの駒は受けに使え、そのうち彼女の気も変わる(こともある)。

○大事な対局前には酒を飲め

 かたくなってはだめ。言いたいことの半分も言えないし伝わらない。気持ちを楽に持ってリラックスすること(わからないように飲むこと)相手には飲まれるな。

○技術面

 たえず自分より少し強い人と指すこと(二級差位)相手の知識を吸収する。知らないうちに強くなっている。番数を指すこと。頭で覚えるより体で。一つの得意戦法をもつこと。必至問題をたくさん解くこと。

 以上のことを守れば?アマ名人になれることを保障致します。えっ、なれなかった人は他の先生についてもう一度勉強しなおして下さい。プロになれるでしょう……。

 春のたわ言。

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「将棋を最愛の彼女だと思うこと」

最愛の彼女かどうかは別として、大好きであることは強くなるために必要なこと。

「三間飛車を最愛の彼女だと思うこと」「角換わり腰掛銀を最愛の彼女だと思うこと」のように戦法を愛すると、局所的にもっと上達スピードが早まるかもしれない。

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「歩が3枚あればと金が3つ出来る。残りの駒は受けに使え」

これがすごい。これが小池流なのだろうか。

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「いろいろな手が浮かんで読んでみると最初に浮かんだ手が最善手の場合が多い」

これは将棋に限らず、他の分野でも同じことが言えるような感じがする。