将棋が勝てなくなくなる演説

将棋マガジン1986年9月号、中原誠名人(当時)の「懸賞 次の一手」より。

 生まれて初めて、選挙演説をしてしまいました。お世話になった某候補に頼まれまして。公示の日は、人も多勢、ロボットやら音楽やら鳩をとばしたりとなかなか派手なもんでした。

 路上での演説は同じ高さなので、そうでもないのですが、選挙カーの上からというのは実に気持ちよかった(笑)。クセになりそうです。「私の勝負運を奪って当選してください」と、うっかり演説したら、ほんとうに将棋が勝てなくなってしまいました(笑)。どうやら、ほんとうにツキを奪われてしまったみたいだから、きっと当選するのではないでしょうか。(談)

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1986年は衆参同日選挙のあった年。

各党とも気合の入る選挙戦だ。

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「私の勝負運を奪って当選してください」

(コピー→貼り付け)ではなく(切り取り→貼り付け)のパターンになってしまったということ。

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棋士と会った後にパチンコをやったら打ち止めになった、棋士と電話で話した後にネット将棋をやったら1手目で相手が投了した、など本当にあった話だが、棋士は勝負に関するオーラを持っている。

中原誠十六世名人の演説が本当になってしまったとしても、不思議ではないような感じがする。