谷川浩司九段の舞台裏暴露解説が、なかなかいい味を出している。
将棋世界1999年1月号、カラーグラビア「第24回将棋の日」より。
この年の将棋の日イベントは、山形県の天童市市民文化会館で行われた。
第1部は「10秒将棋チャンピオン戦」で、出場棋士は、郷田真隆棋聖、井上慶太八段、丸山忠久八段、屋敷伸之七段。
第2部は「次の一手名人戦」で、佐藤康光名人と羽生善治四冠の対局。
1998年「将棋の日」余話。
井上八段、大ショック!
第1部は「10秒将棋チャンピオン戦」。一回戦の対戦相手は箱の中のヒモを引っぱり決めるという新趣向(ヒモが繋がってる者同士が対戦)。結果は、丸山-屋敷、郷田-井上戦。対局前のインタビューでは皆口々に「誰と当たっても強敵ですので・・・」と語っていたが、井上-郷田戦の最中に解説の谷川竜王が「みんな井上さんとやりたいと言ってました」と暴露。井上八段は一回戦負け、「途中で解説の方がへんな事を言うのでカーッときまして」(会場大爆笑)という関西兄弟弟子同士の仲睦じいやりとりもあり、決勝は郷田-屋敷戦で、屋敷七段の優勝。
名人はちょっと臆病?
第2部の「次の一手名人戦」は、対局者の羽生四冠と佐藤名人がスポットライトを浴び舞台中央にせり上がってくるという演出が見もの。写真は開幕前に二人に沈んでいってもらっているところ。「佐藤名人はリハーサルの時、怖くて脇息にしがみついていました」とこれも谷川竜王がポロリ。
丸ちゃん、舞台へ上る。
次の一手名人戦は3択で次の一手を当てるという全入場者参加のメインイベント。正解者が20名くらいになった所で舞台へ上ってもらったところ、その中に丸山八段の顔が・・・。「丸山さんも次の一手名人になってもうれしくないでしょう」と谷川竜王が言ってもニコニコ正解し続けている。対局者の佐藤名人はチラチラ後ろを振り返って気にしている。残り5人になった所でようやく(?)不正解。対局後佐藤名人は「僕と丸山さんは全く棋風が違うので当たらないと思いましたが、いやーあせりました」と。対局は熱戦の末、羽生四冠の勝ち。
—–
次の一手名人戦とはいえ、プロ棋士によって手が当てられたら、たしかに対局者は気になってしまうだろう。
当ててしまうのがニコニコしながら無口の丸山八段だから、より一層怖い感じがしてくる。
なおかつ本気で当てにきている。
谷川竜王の「次の一手名人になってもうれしくないでしょう」の言葉に発奮したかのごとく、丸山八段は翌期の名人戦で佐藤名人から名人を奪ってしまうことになる。