名人の結婚

近代将棋1995年6月号、湯川恵子さんの「女の直感」より。(昨日の続き)

 大山康晴十五世名人は相手の女性の顔もろくに知らずに結婚を決めたそうだ。昔のお見合い結婚てそんなものだったのかなとも思うが、大山先生は、 ”こういう問題は、周囲の人が決めてくださった事に従うのが一番いいのです”  と書いておられる。

 片や兄弟子の升田幸三元名人(実力制第四代名人)が、熱烈な恋愛結婚だったことは有名だ。

 ぐっと若い中原誠先生(十六世名人を継ぐ)は、まさか相手の顔も知らなかったはずはないだろうが、やはり周囲の薦めを受けて後援者のお嬢さんとの見合い結婚だった。   片や米長邦雄前名人が、高校の同級生との恋愛を実らせた結婚だったことは有名な話だ。

 遡って木村義雄十四世名人は後援者のお嬢さんとの見合い結婚だった。

 そして塚田正夫元名人は行きつけの将棋クラブのお嬢さんとの恋愛結婚。早稲田大学将棋部面々の憧れの的だった彼女を、塚田さんがさらってしまったとか。

 う~む、こうして同時代同士の大物を対応させてみると、 永世名人=見合い結婚  短期名人=恋愛結婚

 恋愛感情を結婚に実らせるにはそれなりに手間暇がかかる。永世名人になるような人は、効率よくクリアした?

 谷川浩司王将のタイトル戦の舞台など我々はたっぷりと見慣れていたはずなのに今期の王将戦七番勝負は鮮やかに印象に焼きついた。神戸大震災を背景に羽生善治の全冠制覇を阻止したこと、まさに甦って男を上げた感がある。

 谷川王将はあと一期で永世名人だ。当然十七世名人と目されていたことを私は忘れかけていたけど、思い出した。思えば”羽生名人”はまだ一期目だ。谷川さん間に合うかも知れない。なんたって、お見合い結婚したんだものっ。

 ところで羽生さんはどんな結婚の仕方するかしら、興味津々だ。女性ファンにはこと欠かないし見合いの釣書の条件にもこと欠かない。それはそれで悩ましいだろうなぁ。

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この”永世名人見合い結婚”説は非常に説得力を持つ理論だったが、森内俊之名人が初めてこれを打ち破り、羽生善治二冠も間もなく追い打ちをかけた。

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旧厚生省の調査によると、見合い結婚と恋愛結婚の比率は1930年代に69.0%対13.4%だったものが、1965~1969年に逆転し44.9%対48.7%、2001年~2005年では6.2%対87.2%となっている。 見合い結婚の比率が急激に下がっているので、”永世名人見合い結婚”説は二十世紀限定での正しい理論だったということになる。