対局前日、金魚すくい VS バー・キャバレー

将棋世界1979年10月号、能智映さん(三社連合記者)の「第20期王位戦第4局盤外雑感 王位戦、福岡へ飛ぶ」より。

(対局日の前日)

 ひと息入れ、6時からは西日本新聞の福田社長出席の会席。先に現れた中原は背広上下にきちっとネクタイをしめているが、あとから登場の米長はひと風呂浴びてきたのかユカタ姿である。この取り合わせ、なんとも珍妙だ。

◇…おひらきのあと、二人は別々に繁華街の中洲へ。中原は私に「ほんとに散歩だけね」と念を押して出かけ、川っぷちの夜店の前をぶらついて、金魚すぐいなどをして「じゃあ帰りましょう」と全く健康な散歩。

◇…一方の米長は灘九段らと、バー、キャバレーを回り、10時ごろ帰館。「最後にラーメンを食ってきた」というが、同行者の話によると「米長さん、麺を残して、シルを全部飲んでいた」というからおかしい。

(以下略)

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多くのタイトル戦で中原-米長戦だった時代。

対照的な二人が面白い。

それにしても、対局の前日とはいえ、中洲の夜を金魚すくいだけで終わらせる中原誠王位の精神力は凄い。

また、違った角度で凄いのは、バー、キャバレーを回りながらも午後10時にはホテルに戻っている米長邦雄棋王(当時)。

女性に囲まれながら飲んでいれば、ついつい長居してしまいがちになるものだが、そこを短く切り上げる精神力が並大抵ではない。

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「最後にラーメンを食ってきた」のラーメンは、中洲の屋台の豚骨ラーメンと思われる。

米長棋王が麺を残したのは満腹だったからかもしれないし、あるいは食べ過ぎて翌日に影響を残すのは良くないという判断だったのかもしれない。