将棋世界2005年3月号、「時代を語る・昭和将棋紀行 第18回 内藤國雄九段」より。聞き書きは木屋太二さん。
当初、私は外で見学していたが、これについては面白い話がある。後年、伊達康夫さん(八段)から聞いた。
伊達さんは大阪のジャンジャン横丁で”三桂クラブ”という将棋道場を経営していた。私より3歳年上だった。
「内藤さん、入口に弱い人おいとったら、客の入り全然違うねん」と言う。外から見ている。そのうち指したくなる。辛抱たまらんようになるんですね。ところが強いお客ほど見せたがって、入口に座りたがる。弱い人は奥へ行く。こうなると、外の客は入ってこない。
弱い人を、いかに入口に座らせるか、それが道場主というかマネージャーの腕前であると伊達さんは話していた。売り上げが全然違うらしいんです。
(以下略)
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たしかに、強くない人たちが将棋を指しているのを見れば、自分もちょっとやってみようと思う人が増えるのは間違いなさそうだ。
例えが非常に古くなって恐縮だが、インベーダーゲームが並んでいるゲームセンターがあって、やっている人達がみな高得点をあげていたとしたら、ちょっと別のゲームセンターへ行ったほうが良さそうだ、と思う心理と同じなのだと思う。
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とはいえ、この将棋道場経営のノウハウは、通りから中が見える大阪・ジャンジャン横丁の将棋道場だけに適用できるものであり、ほとんど一般的ではないのが残念なところだ。