福崎文吾八段(当時)によるユニークな棋士紹介(前編)

将棋世界2005年6月号~11月号、福崎文吾八段(当時)の「関西将棋レポート」より。

 井上八段は戦略家で、横歩取りや相掛かりの手将棋を得意にされている。(6月号)

 井上慶太八段は関西棋士の人望が厚く、おもしろい人柄だ。C級の時に昇級の一番を逃して泣いたが、兄弟子の谷川浩司さんから「その努力は報われる。何も無駄な事はない。 谷川浩司」という手紙をもらいその後立ち直りA級までかけ上がった人だ。(10月号)

 畠山鎮六段はいつも剣豪のような雰囲気を持った棋士で、名前は鎮(まもる)でも棋風は攻めの構想に威力を発揮することが多いようだ。(6月号)

 畠山鎮六段は森安正幸六段の弟子である。正幸先生は温厚篤実で、とてもやさしい方だ。鎮さんは細木数子のズバリ言うわよではないけど、ハッキリした所が多く、風貌はサムライのようだ。ちなみに阿部隆八段は新選組の隊長の雰囲気を持っている。(10月号)

 有吉九段は火の玉流と呼ばれる強烈な攻め将棋でありながら、「真剣白刃取り」とも呼ばれている。これは武術の言葉で、その意味は抜き身の刀を素手で受け止める技のこと。(6月号)

 酒井六段はやはり神戸組で人柄も将棋もサラリとしている。また、気がつきにくい手筋を発見するのが得意だ。(7月号)

 西川七段は私と奨励会が同期で、そのせいか初めて会った時から今まで年をとっていない、と思う。(8月号)

 西川七段は私と奨励会が同期だ。さらに同じ12月16日生まれの射手座。なぜか歳は私が2つ上だ。棋風は居飛車党で筋の良い攻めと味の良い受けが得意。佐々木成政の鉄砲隊のような雰囲気を持った棋士だ。ちなみに御子息の和宏君は奨励会の1級で、振り飛車穴熊が得意だ。(11月号)

 対する畠山成幸七段は最近英会話カフェを開設したそうだ。外国の友達が多く、異色の棋士だ。前に成幸さんから市川猿之助主演のスーパー歌舞伎の券をもらい、いっしょに見た。内容は三国志の軍師・孔明編だった。私は感動のあまり途中から涙が止まらなくなってしまった。こんなことはタイタニック以来だ。成幸七段の棋風は振り飛車党で、先日、創元社から「角交換振り飛車」(ネット将棋で流行の戦法)という本を発売された。おもしろいから、ぜひ買ってください。(11月号)

 浦野七段は最近「5手詰ハンドブック」と「3手詰ハンドブック」と詰将棋の本を立て続けに出した。(どちらも日本将棋連盟刊)私の教室であまりやる気のなかった少年が俄然興味を持ったのが「3手詰ハンドブック」だった。浦野七段は詰将棋界最高の賞である看寿賞を受賞されている。それでいて一度も誇る事もなく透明な人柄で、まるで三国志の軍師・諸葛亮孔明のようだ。(9月号)

 対する平藤六段は角換わりの将棋が得意で、繊細で微妙なキカシを得意にしている。また理論と感性がマッチしている。(10月号)

 私がもっともいっしょに遊んだ棋士といえば、まっさきに浮かぶのが南芳一さんだ。若い時は私の家に時々泊まり、私の家から対局に出かけたりしたこともある。ある時、南さんが何か元気がないと思って熱を計ったら39度5分もある。その時、平藤さんと南さんと私でパソコンの三国志をしていたのだが、2人に説得され南さんは渋々帰っていった。また南さんは手品師にもなりたかった事がある。彼の話術は巧みで、私はよく大笑いしたものだ。(10月号)

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福崎文吾九段は、日本国内で個人用パソコンが出始めた1983年頃からパソコンで「三国志」や「信長の野望」などのゲームを楽しんでいた。

福崎文吾七段(当時)と百貨店

棋士の紹介に三国志や戦国時代などの武将の名前が出てくるのは、そういう意味では福崎九段のお家芸だろう。

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「細木数子のズバリ言うわよ」は、2004年8月から2008年3月まで放送されていたTBS系の人生相談バラエティ番組。正式な番組名は『ズバリ言うわよ!』。

細木数子さんが大人気の頃。

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今日の17:50から、ニコ生で、福崎文吾九段と糸谷哲郎八段が『信長の野望』を実況プレイするという番組が放送される。

ゲームの進行もさることながら、二人の会話が最も興味深いのではないだろうか。

【盤外企画】福崎文吾九段・糸谷哲郎八段が『信長の野望』を実況プレイ(ニコ生)

今日は武士系、三国志系を中心としたが、明日はもっとユニークな棋士紹介が現れる。