石田和雄八段(当時)「勝浦さんが実にうまく指しているねえ」

将棋マガジン1986年3月号、川口篤さん(河口俊彦六段・当時)の「対局日誌」より。

 記者室で雑談していると石田が入ってきた。

「勝浦さんが実にうまく指しているねえ」と言う。こういうときは自分のことを聞いてもらいたいのだ。

「あなたはどうだった」

「ええまあ」

 ニコニコしいる。だれかが「次の一手みたいな妙手が出ましたね」と持ち上げた。待ってました、とばかり「並べてみましょうか」と盤の前に座った。

 相手は鈴木輝彦。筋のよい者同士の戦いだから、華麗な戦いとなっている。ホウ、という歓声があがるたびに石田の講釈が出るが、それは割愛して、自慢の一手は2図の△7五桂だ。

 ▲7五同歩なら、△5六角▲同金△7六桂。▲7五同銀なら△同歩と取って次の△7六歩がきびしい。見事な決め手で、2図までで将棋は終わっている。

(以下略)

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「こういうときは自分のことを聞いてもらいたいのだ」

この阿吽の呼吸が絶妙だ。

石田和雄九段のボヤキも最高だが、このような、自分の指した妙手を話したくて話したくて仕方がない様子も、とても面白い。

石田和雄九段は最高のキャラクターだといつも思う。

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今日は石田九段一門の新年会の日。

ファンの方も交えて、大いに盛り上がることだろう。

石田九段の今週のつぶやき 1月17日(柏将棋センター)