将棋世界1995年8月号、泉正樹六段(当時)の「公式棋戦の動き」より。
〔勝ち抜き戦〕
7図をご覧になって、持ち駒がふつりあいなのをお気づきになりましたか?
先手の島は角と金なら、文句なく金を大事にする棋風。故に、角と銀でも同じ位に受け止めているのだ。
図より中央制圧を目指し▲5六金は島らしいが、△6五銀を見落としていたからヒドイ。味方にパスするはずが、うっかり敵にトスして、あっさりヘディング・シュートを決められた有様。”サッカー部主将”が見逃すはずもないのだ。
▲5六金では、▲2五銀と単純に2筋を攻めるのが面白かった。深浦も「悪くはないはずだけど、難解です」と、駒得の局面に不服な様子。98手の快勝にも、喜ばず疑問点を追求。「勝て兜の緒を締めよ」が深浦の真髄。
勝ち抜き物に立った深浦は次に桐山と対戦。8図では先手の2八銀は完全に遅び駒。桐山の巧みな作戦の前に不利を感じ、仕方なく▲5五銀とからんだと思った。ところが、桐山の指し手は”忍の一字”の△5三銀打。これしか頑張る手はないらしいが、本来そんな予定じゃなく、以前に誤算があったようだ。
優位を得た深浦はこの後冴え渡る。△5三銀打以下、▲4六歩△3四金▲4五歩△3三銀▲4四歩と軽やかなドリブルで敵陣を乱し、さらに△同銀左▲4三歩△1五角▲4四銀△同銀▲2五銀と木っ端微塵に後手陣を粉砕してしまった。
全日プロでは谷川に力及ばず敗れた深浦だが、また一回り大きくなって帰って来た。上位陣も気合を入れないと勝てない相手だ。
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日本将棋連盟サッカー部初代主将の深浦康市五段(当時)。
これほど棋譜解説にサッカーを取り入れた泉正樹六段(当時)も見事だ。
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今日からNHK将棋フォーカスで豊川孝弘七段の講座「豊川孝弘のパワーアップ手筋塾」が始まる。
どのような講座になるかとても楽しみだ。
今日のNHK杯戦、森内俊之竜王-木村一基八段戦の解説が深浦康市九段で、深浦九段と豊川七段は四段昇段が同じ日。
とても縁のある組み合わせだ。
ちなみに、この記事が書かれた頃のNHK将棋講座の講師は羽生善治六冠(当時)で「終盤の勝ち方 羽生の法則1995年4月~6月だった。
聞き手は友田幸岐さん。
友田幸岐さんは、1993年10月28日の「ドーハの悲劇」の時、NHK BS1 での実況中継番組でスタジオ司会を務めていた。
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(深浦康市九段のサッカー関連記事)
→サッカー「日本将棋連盟VSウィーンフィルハーモニー管弦楽団」