控え室で繰り広げられた肉体の競演

将棋世界2001年4月号、鈴木大介六段(当時)の「鈴木大介の振り飛車日記」より。

 大野六段との王将戦。大野六段は僕が奨励会にいた時に幹事をしていたこともある先輩。実は他にとても面白いエピソードもあるのだが書いていいのかなあ(笑)。あれは僕が奨励会に入ったばかりで11歳の頃、奨励会員になって初めてのぞく記者室(桂の間)は、まさに光り輝いていた。夏休みの午後、何をするでもなく先輩と一緒の雰囲気を記者室で幸せに感じていると、大先輩奨励会員の豊川二段(現五段)と小川初段(現指導棋士四段)が何故か腹筋の話で盛り上がり、最後には部屋に僕しか居ないことを確かめると互いに上着を脱ぎだしてしまったのだ。そこに大野五段(当時)が通りかかるというのだから恐ろしい。関東が誇るムキムキマンが3人集まってしまったのだから大変だ。後は御想像にまかせるしかないが、小学生の前で演じられた、一言で言えばそれは「男の美学」「三色筋肉の織り成す肉体美」であり、僕にとっては生まれて初めて味わう「生き地獄」であった。

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鈴木大介少年にとっては災難としか言いようがない、1986年頃の出来事。

上半身裸の大野八一雄五段(当時)、豊川孝弘二段(当時)、小川浩一初段(当時)によるボディビル競技会。

よくトラウマにならなかったものだと思う。

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小学生の頃、同級生の家に遊びに行った時に、ブルワーカーというものを初めて見た。

ブルワーカーは、スプリング内蔵の収縮性のあるシリンダーのようなもので、このシリンダーのようなものを両手で縮めて筋力を付けるという器具。

ブルワーカーXO(ハードタイプ・DVD付)※ミニブルワーカー付特別2点セット:【I&J】

この友達は肉体を鍛えることに燃えており、ブルワーカー以外にもエキスパンダー、握力増強ハンドグリップも使っていた。

彼は「上半身は逆三角形にならなければいけない」というのが持論であり、ブルワーカーを中心とするトレーニングを重ねたのか、本当に段々と逆三角形の上半身になっていった。

「どう、見てよ、オレのこの逆三角形の体」が口癖だった。

豊川二段と小川初段の初めのやりとりも、「どう、見てよ、オレのこの腹筋」のような会話だったのかもしれない。