神吉宏充五段(当時)と先崎学五段(当時)、22年前の「大丸別荘」での夜

将棋世界1991年7月号、先崎学五段(当時)の「公式棋戦の動き」より。

 まったく神吉さんには恐れ入るばかりだ。

 ―といっても将棋の事ではなく大喰いの話である。いやはや、前から薄々感づいていたが、それにしても凄いと思った。ハッキリいって、オドロキマシタネ、私は。

 名人戦第3局、福岡二日市温泉の『大丸別荘』で一緒だった。指し掛けの夜、宴会が行われたが、まあ食べること食べること。水割りオンリーという記者や海老が喰えないという人間から集めた海老の数6本。言っておくが、ビールの瓶のように大きな海老だよ。喰ったね~。むしゃむしゃ、ガルガル、しかも海老だけではない。煮物、刺身、御飯に至るまで、全部3人前ずつたいらげた。

 それだけならいい、その後言ったね。

 「先チャン、後で

 ラーメン食いに行こうか」

 ・・・。ただただ恐れ入るばかりです。ハイ。ちなみにさすがの神吉さんも「腹に物が入れば眠くなる」という定理には勝てず、楽しみにしていた中洲にこそ行けなかったものの、夜の10時頃起き出して、おにぎりを、5個喰っていた。どうなってんだ、あの腹は。

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今日から行われる竜王戦第3局の対局場である「二日市温泉 大丸別荘」での22年前の出来事。

水割りオンリーの記者とは、毎日新聞の故・加古明光さん。

加古さんは酒を飲みだすと水割りオンリーで、棋士からは愛されて”水割りおじさん”と呼ばれていた。

神崎健二七段のブログにも、加古さんの”水割りおじさん”のことが書かれている。

ある棋士の日常 「2002-01-25」

神吉宏充五段(当時)は、加古さんからほとんどの夕食を譲渡されたものと思われる。

あとは、海老を食べられない人から。記録によると、谷川浩司竜王(当時)はこの名人戦第3局には来ていないので、谷川竜王以外の海老嫌いの人が少なからずいたということだ。

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ビール瓶のように大きな海老とは、どのような料理だったのだろう。

海老の鬼瓦焼き、海老フライ、海老の天ぷら・・・「大丸別荘」の料理の傾向から考えると、海老の塩焼きか鬼瓦焼きだったのかもしれない。

竜王戦第3局、今日の夜の関係者の夕食でも、このような大きな海老が出てくれば面白いのだろうが、「大丸別荘」の今月の献立を見ると、大きな海老は含まれていないようだ。

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以前の記事に書いたことだが、先崎学五段(当時)が記事に書いている1991年名人戦第3局〔中原誠名人-米長邦雄九段〕は、羽生善治三冠が初めて副立会人を務めた一局。立会人は森けい二九段。

神吉五段と先崎五段はNHKBS放送の解説役。

羽生善治棋王(当時)が副立会人の名人戦の夜

この記事を読むと、神吉五段が食べ過ぎて寝ているうちに、先崎五段は、羽生善治棋王(当時)、森けい二九段、故・池崎和記さんと麻雀を打ち始めていることがわかる。

神吉五段は再び起き出して、麻雀を観戦しながら5個のおにぎりを食べたのだろう。

おにぎりは、麻雀をやっている人や観戦者用に旅館側が夜食用に20個くらい用意したものだと考えられる。

そういう意味では、決して巨大なおにぎりではなかったのかもしれない。

・・・とはいえ、やはり5個はすごい。