11月11日に日本青年館ホテルで「森雞二九段のプロ棋士五十周年を祝う会」が開催された。
→5月に引退の森九段 夢は「プロのギャンブラーに」!?(スポニチ)
この会は、森雞二九段の弟弟子の郷田真隆九段が諸々を取り仕切り実現された。
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このような会の場合、案内状に発起人が名を連ねる。
この会の発起人は、森雞二九段と本当に縁の深い人ばかり。
最大級の迫力の案内状だ。
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ここからは日記風に。(時刻はおおよそのもので正確ではありません)
11月11日
7:00
朝風呂に入る。
今日の「森雞二九段のプロ棋士五十周年を祝う会」は神宮前の近辺で行われる。少し早めに家を出て、昔住んでいた恵比寿、白金台を散策しながら遅めの昼食を白金の洋食店「ハチロー」でとろうと考えた。
「ハチロー」は学生時代に住んでいた所から4分くらいの距離にあり、よく行ったものだった。カツカレーにするかロースカツ定食にするか迷う。
7:01
しかし、来週から2週間ほど、ブログの記事をほとんど書けなくなるので、ブログの書きだめをしなくてはならない。
早めに書いて、恵比寿に向かおう。
12:00
ブログの書きだめが、思ったよりも進まない。
13:30
もう恵比寿、白金台は無理だ……。気を取り直してブログの書きだめに邁進する。
16:00
少し早いが家を出る。ブログの書きだめはまだまだ残っている。
16:45
千駄ヶ谷駅下車。
日本青年館ホテルは千駄ヶ谷駅からも信濃町駅からも徒歩12分。今年の8月にオープンしたばかりのホテルだ。
16:50
工事中の国立競技場の横を歩く。途中、千駄ヶ谷トンネルが見えた。心霊トンネル界では非常に有名な千駄ヶ谷トンネルだが、トンネルの上に墓場があるだけで、そのようなトンネルにはなかなか見えない。
トンネルの写真を撮ってTwitterにアップしようと一瞬思ったが、「祝う会」の前に心霊トンネルの写真というのも味が悪いと感じ、思いとどまる。
17:00
日本青年館ホテルに到着。神宮球場と道を挟んだ場所だ。
開場は17:30なので、1階をブラブラする。新しいホテルといった感じで気持ちがいい空間。
17:05
ほんの少し外に出て散策。ホテルの隣は國學院高校。
佐藤康光九段の出身校だ。
佐藤康光九段と國學院高校というと思い出すのはこの話。→佐藤康光九段を語った名文
17:10
ホテルに戻る。
17:11
1階のトイレへ入ろうとドアを開けた瞬間、そこが女子トイレであることに気付き、「すみません」と言いながら顔面蒼白になりながらドアをすぐに閉める。
新しいホテルなので、男性用女性用のマークが斬新で、よく見ずに男性用だと思いドアを開けたのが失敗の原因だった。
そういえば、佐藤康光九段もタイトル戦の時、将棋に集中しすぎて間違って女性用トイレに入ろうとしたことがあったというエピソードを聞いたことがある。
國學院高校を見たから佐藤康光九段が少し乗り移ってくれたんだと考えることにしよう、とも思ったが私が失敗をしたことに変わりはない。
17:13
少し気落ちしながら1階のコンビニで買物をする。
17:15
コンビニを出ると、1階の入口近くに鈴木大介九段が立っている。
挨拶をすると、人と待ち合わせをしているとのこと。
「もう上に行っても大丈夫だと思いますよ」と鈴木大介九段。
後でわかったことだが、奥様と待ち合わせをしていたようだ。
17:18
9階の会場へ。
受付は森雞二九段門下の島井咲緒里女流二段、堀彩乃女流2級、そして横山泰明六段。
私は準備から少しお手伝いさせてもらいました。当日は森門下の堀彩乃2級や横山も一緒に、受付など。
女流棋士の皆さんもたくさんご出席くださり、大変華やかでした✨ご出席いただいた皆様、ありがとうございました? pic.twitter.com/oxUIJLNmLJ
— 島井咲緒里 (@saori_shimai) November 11, 2017
17:19
名前を記帳し会費を払い、抽選会用の番号札を受け取る。
私は「4」。
千駄ヶ谷トンネルの写真を撮ろうとしたから4番という数字になってしまったのだろうか。
昔の阪神タイガースならバッキーの背番号だ。
私が中学生の頃に通っていた耳鼻科の診察券番号は444番だった。
まあ、覚えやすくていい番号だと思おう。
17:20
受付の横では、郷田真隆九段と奥様が立礼をしている。
郷田九段の奥様は非常にチャーミングな雰囲気。お似合いのご夫婦だ。
17:22
開宴まで、久しぶりにお会いした方などと話をしながら過ごす。
17:30
弦巻勝さんが目の前を通ったのでご挨拶をする。
弦巻さんは私とそれまで話していた女性を見て「奥さん?」と楽しそうに言いながら去っていった。
この軽妙さも弦巻さんならでは。
「私にバチが当たります」と弦巻さんの背中に向かって言う私。
17:45
飄々としながらも押し出しの強いオーラを感じた。
メガネはかけていなくて以前よりも太られたようだが、間違いなく滝誠一郎八段である。
ご挨拶をすると、「お、お、久しぶりじゃない」と言って滝八段は去っていった。
18:00
開宴。
司会は、元テレビ東京アナウンサーの島田良夫さん。
今年80歳とは思えぬほどの若さとお元気さ。
はじめに自己紹介を兼ねて、1972年から始まった東京12チャンネル「早指し将棋選手権戦」の司会を務めたこと、その第1回放送が森雞二六段-滝誠一郎四段戦であったこと、その時は森雞二六段が勝ったことなどが話された。
”滝誠一郎四段”というところで、場内から温かい笑いが起きた。
滝八段が今も昔も人気者であることが分かる。
18:01
この日の来場者数は160名を超えることが島田さんから発表された。
場内は大盛況。森雞二九段の交友の幅広さから、来場者の3分の1ほどが将棋界以外と思われた。
18:02
門下の里見香奈女流五冠はリコー杯女流王座戦第2局、里見咲紀女流初段は現地でのイベントのため出席はできなかったが、二人からの祝電が届いている。
18:03
ところで、島田良夫さんが「早指し将棋選手権戦」という言葉を発した時、直立不動の姿勢になってひときわ声が大きくなったような感じがした。早指し将棋選手権戦を今でも愛している気持ちが伝わってきた。
18:05
佐藤康光会長の挨拶。
「森先生と初めて対局をさせていただいたのは、私が四段の頃、王位戦挑戦者決定リーグ戦でのことでした。今朝、その将棋を並べてきたのですが(ここで場内から笑いが巻き起きる。朝、その棋譜を並べる生真面目さがいかにも佐藤康光九段らしいから。棋士の出席者が多いと、このようなところで笑いが起きる)、その時は私の信用力が足りなくて森先生はほとんど時間を使ってくれませんでした。そのおかげで私はかろうじて勝つことができたのですが、そのあとすぐに、王位戦挑戦者決定リーグ戦の同じ組でのプレーオフで森先生と当たりました。この時は森先生が時間を使って考えてこられて、私はいいところなく負けてしまいました。森先生は強いなあとつくづく感じました。この一局、素晴らしいですから、皆さんも家に帰ったらぜひ並べてみて下さい」
今日の来場者は棋士が多いので、ファン向けではなく棋士向けのメッセージ。やはり「家に帰ったらぜひ並べてみて下さい」で爆笑となった。
18:10
作曲家のすぎやまこういちさんの挨拶。
森雞二九段を最初にカジノに誘ったのはすぎやまこういちさんということだった。それ以来、森雞二九段とすぎやまこういちさんは数え切れないほど海外のカジノへ行っている。
すぎやまこういちさんといえば、ドラゴンクエストシリーズの作曲を手がけている。
私はドラクエはⅥくらいまでしかやっていないが、頭の中をドラクエの音楽が鳴り響く。そして、少し離れたところに立っている山田久美女流四段は沢田研二さんの大ファンだが、すぎやまこういちさん作曲のザ・タイガース「僕のマリー」「君だけに愛を」「モナリザの微笑」などの曲も頭の中を駆け巡る。
18:15
最高位戦日本プロ麻雀協会副代表の金子正輝プロの挨拶。
やはりカジノ仲間。
森雞二九段著の『海外旅行カジノの遊び方』では、すぎやまこういちさん、金子正輝さん、バックギャモン日本チャンピオンの下平憲治さんと座談会をやっているほど。
本日は、師匠である森先生の「プロ棋士五十年を祝う会」が開催されました。
ご挨拶は、作曲家すぎやまこういち先生、最高位戦日本プロ麻雀協会副代表の金子正輝プロなど。多彩な交友関係の師匠らしく、様々なジャンルからのご出席で大変な賑わいでした。
半世紀にわたるプロ棋士生活、お疲れ様でした! pic.twitter.com/8qrOR5ECdi— 島井咲緒里 (@saori_shimai) November 11, 2017
18:20
中原誠十六世名人の音頭による乾杯。
中原十六世名人と森九段は一緒に海外旅行に行くことも多かったという。
鈴木輝彦八段(この日はマジシャンのようなスパンコールが入ったジャケットを着ていた)と3人で行った旅行では、夕食だけ一緒に食べるということだけを決めて、あとは自由行動。森九段はカジノに入り浸りだったらしいが、中原十六世名人が様子を見に行くと、森九段の前に1,000万円分くらいのチップが置かれていてビックリしたことがあったことなどが話された。
18:30
森雞二九段からの挨拶。
故郷の高知県で将棋の普及活動を精力的に行うが、それでも時間が余る。その時間を活用して、いつかはプロのギャンブラーになりたい。アメリカでは優勝賞金7億円の大会がある。7億円はまあ無理にしても、1億円は狙いたい。幸い、日本にもカジノができる。昔出したカジノの本(と言って『海外旅行カジノの遊び方』を取り出す)も、たくさん売れるようになるかもしれない。
などの森雞二九段らしさ溢れる話があった。
18:37
お孫さんから森雞二九段への花束贈呈
若い頃いろいろ遊んでもらった森九段のパーティに行って来ました。
50年間ご苦労様でした。 pic.twitter.com/nTFW6UUcf2— 田中寅彦 (@tora_ejison) November 11, 2017
18:40
ここからは通常の立食パーティー。
通常といっても、多くの棋士、女流棋士、将棋界関係者、囲碁の武宮正樹九段、雀鬼・桜井章一プロ、などのいるパーティー。
ご夫婦で来場している棋士も多く、田中寅彦九段夫妻、塚田泰明九段・高群佐知子女流三段、木村一基九段夫妻、鈴木大介九段夫妻、土佐浩司八段夫妻など。
18:41
私は将棋ペンクラブの幹事歴が長いからか、このようなパーティーでは自分が楽しむよりも、来場されている方々の楽しそうな様子を見ながら酒を飲むのが好き、という変な体質になっている。
そのような目で見ても、この日のパーティーは本当に来場者の方々が楽しんでいる素晴らしいパーティーだった。
18:45
喫煙所へ行くと、勝浦修九段と弦巻勝さんが話をしていた。
勝浦九段は最近では麻雀はやっていないこと、弦巻さんは月に一度、森雞二九段と麻雀をやっていること、が話されていた。
「最近は、森さんとの麻雀は5時には終わり。ちょうどいい時間だよね」と弦巻さん。
その時は(そうなんだ)と思いながら聞いていたが、今になって思うと、5時が当日の午後5時なのか翌朝の午前5時なのか翌夕の午後5時なのかが分からない。
18:55
木村一基九段と話をする。
木村九段は、翌日に自身の昇段記念祝賀会・将棋大会・指導対局会を控えている。前日のいろいろと忙しい中、この会に顔を見せるところが、木村九段らしい律儀なところ。
「明日の祝賀会ではバトルロイヤル風間さんにお客様の似顔絵を描いていただくんですよ」
「聞きました。バトルさんもすごく楽しみにしていましたよ」
「おー、そうですか」
「バトルさんはいつも、酒を飲みながらの方が似顔絵に調子が出ると言っていますから、明日も酒を飲んでもらいながらが良いかもしれませんね」
「そうなんだ、明日はバトルさんにどんどん酒を出すようにします」
→似顔絵と酒《11・14・火》(バトルロイヤル風間の見物したり見物されたり)
19:05
滝誠一郎八段と話をする。
「いやー、目の手術をしちゃってさー。その時の先生が女医さんで、この人が凄い美人なんだよ」
「あ、それ、結構大事ですよね」
「そうそうそう。それでその先生が言うんだよ。タバコの本数が少し多いですって」
「はい」
「だから、タバコをきっぱり止めちゃったんだ」
「え、何も全部止めなくても……」
「止めたら、この通り15kgも太っちゃったよ」
とても嬉しそうに滝八段は語っていた。
村山聖八段(当時)の東京での兄貴分で、村山聖八段にアロハシャツとサングラスを身に着けさせた滝誠一郎八段である。
19:10
新しい形態のポーカーがあるらしく、会場に設けられた机で、森雞二九段、森内俊之九段、金子正輝プロの3人でゲームが始まる。
見学する人も多数。
19:25
窪田義行七段と話をする。
『中国史にみる女性群像』という本を手にしている。
「あっ、清水書院の本なんですね。清水書院って教科書とか副教材の…」
「懐かしい名前でしょう」
パーティーの時に本を持っているのが、窪田七段らしいところでもある。
19:35
抽選会が行われる。
郷田九段の奥様が数字の入った箱を持って、そこから森雞二九段が当たりの数字を引くというもの。
当選者5名に森雞二九段から色紙が手渡される。
意外とこういう時は、身内に当たったりすることがあるものだが、この時も森九段のお嬢様(花束を渡したお孫さんのお母さん)が当たった。
「お前はダメだよ」と森九段が言ってその当たりは無効に。
お嬢さんは笑いながらも少し残念そうだった。父親の色紙を1枚も持っていない可能性が高い。
19:38
なんと、私の「4」が当たった。
このような当たりはいつ以来だろう。
昭和の頃、とあるビンゴで「新高輪プリンスホテル宿泊券」が当たったのが最後かもしれない。
当たるとはこのように嬉しいものなのか。
森雞二九段から色紙を手渡される。
「一閃」の揮毫。
森雞二九段らしさ溢れる言葉だ。
19:42
中締めは森雞二九段の親友の勝浦修九段。
勝浦九段は、名人戦で森九段が剃髪にした理由を今日に至るまで聞いたことがないという。
親友だからこそ、いちいちそのような理由は聞かず、何事もなかったように普段通りに接する。格好いい姿だ。
勝浦九段らしいと思った。
19:48
来場者が帰りはじめ、会場の人口密度がかなり少なくなった頃、羽生善治棋聖が森雞二九段と話をしていた。
落ち着いてから、森九段にお祝いの言葉をかけようということだったのだろう。
19:49
郷田真隆九段と奥様は、ホテル側との進行の調整などで、ずっと動き通しだった。
準備段階から今日に至るまで、本当に大変だったと思う。
ありがとうございました。
19:52
ホテルを出る。来場者には森雞二九段の記念扇子がお土産として配られた。
19:53
普通なら千駄ヶ谷駅に向かうところだが、反対側の青山方面へ出てみようと思った。
土曜日の夜の青山を少し散歩して、変わったコースから帰ってみるのも悪くはないと考えたのが大きな理由。
どちらにしても、ブログの書きだめがまだ残っているので、あまり寄り道をせずに家に帰らなければならない。
ブログを始めてからこの9年半、寄り道をすることは確実に減っていると思う。
20:00
今年は5月に森信雄七段の「森一門祝賀会」、そして今日の「森雞二九段のプロ棋士五十周年を祝う会」。
5月は一門、今日は一閃。
どちらも本当に良い会だった。
たまたまではあるが、私も森なので、頭の中に森の暗刻ができたような気持ちだ。